カツセマサヒコ、燃え殻原作映画も 名曲「エイリアンズ」が“青春の記憶”に与える作用

「エイリアンズ」はなぜ“青春もの”定番に?

 それでは、世代を超えて愛され続ける「エイリアンズ」とは、どのような楽曲なのか。同曲の歌詞には様々な解釈ができるような奥行きがあるが、例えば「青春」という補助線を引くと、そうした季節に特有の切なさが浮かび上がってくる。映画『明け方の若者たち』でも引用された〈踊ろうよ さぁ ダーリン ラストダンスを/暗いニュースが 日の出とともに街に降る前に〉という一節は、永遠のように思えた〈キミ〉との日々は、いつかは終わることを示唆している。また、歌の中に何度も登場する〈魔法〉という言葉は、「いつかは解けてしまうもの」と読み替えることができる。穏やかで美しいメロディにのせて歌われる歌詞の背景には、こうした残酷な現実が横たわっており、そして、その現実と折り合いをつける時に、人は青春時代を終え、大人になるのかもしれない。この楽曲は、このように「青春」の本質を鋭く射抜いているからこそ、世代を超えて、聴く者の心を動かすのだと思う。

 他の例を挙げると、Netflixで実写化された『ボクたちはみんな大人になれなかった』では、小沢健二の楽曲が大きくフィーチャーされており、主人公の2人による文通のやりとりの中には、スチャダラパーとの共作曲「今夜はブギーバック」が登場する。そして同曲は、映画『モテキ』においてもエンディングテーマとして大々的に用いられている。これらは、90年代の楽曲がその時代を生きた者にとっての「青春」の象徴として登場する例であるが、たとえリアルタイム世代でなくても、こうした映画を通して過去の名曲の普遍的な魅力に気付き、インターネットを通してディグっていく観客は多いだろう。昨年には、2010年代の楽曲が重要な役割を担った『花束みたいな恋をした』が大ヒットを記録したことが記憶に新しいが、こうした映画とポップミュージックの幸福な関係は、これから先も続いていくと思う。

参考

https://www.shinchosha.co.jp/book/351011/
https://cakes.mu/posts/17430
https://realsound.jp/book/2020/06/post-564831.html

■公開情報
『明け方の若者たち』
全国公開中
出演:北村匠海、黒島結菜、井上祐貴、山中崇、楽駆、菅原健、高橋春織、三島ゆたか、岩本淳、境浩一朗、永島聖羅、木崎絹子、寺田ムロラン、田原イサヲ、わちみなみ、新田さちか、宮島はるか、佐津川愛美、高橋ひとみ、濱田マリ
監督:松本花奈
脚本:小寺和久
原作:カツセマサヒコ『明け方の若者たち』(幻冬舎刊)
主題歌:マカロニえんぴつ「ハッピーエンドへの期待は」(TOY’S FACTORY)
配給:パルコ
(c)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会
公式サイト:akegata-movie.com
公式Twitter:@akewaka_info

■配信情報
Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』
Huluにて、2022年5月配信予定
主演:成田凌
原作:燃え殻
原作協⼒:萩原健太郎
脚本:藤本匡太、燃え殻、萩原健太郎
監督:萩原健太郎
劇中歌:キリンジ「エイリアンズ」(WARNER MUSIC JAPAN)
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
製作著作:HJホールディングス
公式サイト:https://www.hulu.jp/static/anatanikikasetai/
公式Twitter:@aku_Hulu

Netflix映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』
Netflixにて配信中
出演:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、片山萌美、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人
原作:燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮文庫刊)
監督:森義仁
脚本:高田亮
音楽:tomisiro
制作担当:栗林直人
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆
プロデューサー:山本晃久
アソシエイト・プロデューサー:近藤多聞
ライン・プロデューサー:保中良介
配給:ビターズ・エンド
2021/124分/カラー
(c)2021 C&I entertainment
公式サイト:bokutachiha.jp

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