第94回アカデミー賞ノミネーション予想 『ドライブ・マイ・カー』『スパイダーマン』は?

 第94回アカデミー賞各部門のノミネーションは、北米西海岸時間2月8日早朝5時(日本時間2月8日22時)に発表になる。2021年4月25日に行われた第93回アカデミー賞は、2020年のコロナ禍で劇場が閉鎖していた期間を考慮し、ノミネーション基準となる公開時期を2021年2月末まで延長。授賞式は小さな会場で限られた招待客のみで行われた。第94回のノミネート基準は、2021年3月1日から12月31日までの期間に、全米6都市(ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、マイアミ、アトランタ)のいずれかにおいて連続する7日間以上劇場で有料上映された作品に限る。今年のノミネート作品は、従来よりも2カ月短い10カ月の間に公開された作品から選ばれることになる。2020年に比べて劇場の営業館数は増え、興行収入は2020年度の461万2,035ドル(約5億2,993万円)から2021年の1,031万4,732ドル(約11億8,519万円)と倍以上になったが、コロナ禍以前の2019年の1,242万6,869ドル(約14億2,788万3,374円)には達していない(全てBox Office Mojo調べ)。

 アカデミー賞の投票権を持つAMPAS(映画芸術科学アカデミー)の会員数は9921名(2020年発表)。近年の4年間で3000名近くの新規会員を迎え入れている。今年の有効投票会員数は9487名で、出身国は82カ国に及ぶ(*1)。各会員はブランチ(支部)に分かれ、長編アニメーション賞と作品賞以外はブランチメンバーがノミネーション作品選出投票を行う。日本のメディアでは『ドライブ・マイ・カー』のノミネーションが話題だが、Netflix、Amazon Studio、Apple TV+が強力な作品を数本抱え、北米ではワーナー作品は全て劇場公開と同時にHBO Maxでも配信されたことにも注目したい。そして、オスカー常連のサーチライト、A 24ともにノミネート数を減らしそう。2021年はインディペンデント映画にとっても至難の1年だった。

 COVID-19新株の煽りを受け多くの授賞式が縮小・延期される中、今年のノミネーションにはどのような作品が選ばれるだろうか。上記のような数字と風潮を踏まえ、主要賞の候補作を予想してみたい。

主演女優賞

オリヴィア・コールマン(『ロスト・ドーター』)
ペネロペ・クルス(『Parallel Mothers(英題)』)
ニコール・キッドマン(『愛すべき夫妻の秘密』)
レディー・ガガ(『ハウス・オブ・グッチ』)
クリステン・スチュワート(『スペンサー ダイアナの決意』)

次点:
ジェニファー・ハドソン(『リスペクト』)
ジェシカ・チャステイン(『タミー・フェイの瞳』)
レイチェル・ゼグラー(『ウエスト・サイド・ストーリー』)

 『スペンサー』で苦悩するダイアナ元妃を演じたクリステン・スチュワートは、賞レース序盤こそ独走状態だったが、SAG(全米映画俳優協会)賞とBAFTA(英国アカデミー賞)のノミネーションを逃し、次点のジェニファー・ハドソンとジェシカ・チャステインが追い上げている状態。『ウエスト・サイド・ストーリー』は興行は難しかったが、作品への評価はだんだん上がってきているので、新星レイチェル・ゼグラーのノミネーションもあるかも。

主演男優賞

ベネディクト・カンバーバッチ(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
ウィル・スミス(『ドリームプラン』)
アンドリュー・ガーフィールド(『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』)
ハビエル・バルデム(『愛すべき夫妻の秘密』)
デンゼル・ワシントン(『マクベス』)

次点:
ピーター・ディンクレイジ(『シラノ』)
レオナルド・ディカプリオ(『ドント・ルック・アップ』)

 上から4名はほぼ当確、残り1枠をデンゼル・ワシントン、ピーター・ディンクレイジ、レオナルド・ディカプリオが奪い合うことになりそう。ペネロペ&ハビエルは夫婦揃って主演俳優賞ノミネート、しかも外国人(インクルージョン枠!)という快挙を成し遂げるかもしれない。

助演女優賞

アリアナ・デボーズ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
キルスティン・ダンスト(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
アーンジャニュー・エリス(『ドリームプラン』)
ルース・ネッガ(『PASSING -白い黒人-』)
マーリー・マトリン(『コーダ あいのうた』)
次点:
カトリーナ・バルフ(『ベルファスト』)

 キルスティン・ダンストからルース・ネッガまでの4名は当確予想、1986年の『愛は静けさの中に』で主演女優賞を最年少受賞したマーリー・マトリンと、ヨーロッパ系会員に人気の高い『ベルファスト』のカトリーナ・バルフが争う。この6名は誰もが名演で、なんとか6枠にならないかと思うほど。

助演男優賞

コディ・スミット=マクフィー(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
トロイ・コッツァー(『コーダ あいのうた』)
キアラン・ハインズ(『ベルファスト』)
ジャレッド・レト(『ハウス・オブ・グッチ』)
ブラッドリー・クーパー(『リコリス・ピザ』)

次点:
ベン・アフレック(『僕を育ててくれたテンダー・バー』)

 ノミネートだけでなく、受賞予想もコディ・スミット=マクフィーが強い。トロイ・コッツァーと一騎打ちになりそう。ブラッドリー・クーパーは『ナイトメア・アリー』の主演よりも、ポール・トーマス・アンダーソン作品の最高のスパイスになっていた『リコリス・ピザ』でノミネート予想。

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