記録的大雪&オミクロン株の脅威で新作の封切りもなし 弱り目に祟り目の北米興行

 「弱り目に祟り目」と言うほかない。コロナ禍、オミクロン株の脅威が続くなか、アメリカに記録的暴風雪が襲いかかった。

 報道によると、2022年1月29日にニュージャージー州のアトランティックシティでは最大約84センチの積雪を記録。ボストンでは約60センチ、ニューヨークのセントラルパークでも約21センチの積雪が観測されたという。これはノーイースター(Nor'easter)と呼ばれる爆弾低気圧がもたらした“冬の嵐”であり、飛行機の欠航も続出、一部の州では非常事態宣言も発出された。

 映画館も大雪の影響を受け、大手映画館チェーンのAMC TheatresとRegal Cinemasは、この週末にそれぞれ約50施設を休業(ただしニューヨークでは多くの劇場が営業を続けた)。これは天候が回復しだい営業を再開するという一時的な対応だが、よりにもよって週末の直撃である、映画館業界には大きな痛手だ。そもそもオミクロン株の感染拡大を受け、スタジオ各社は今週末にメジャーな新作映画を公開していない。したがって映画興行を牽引するのは、前週までに封切られた“おなじみの作品群”とならざるを得なかったのだ。

 オミクロン株、記録的大雪、新作の封切りなしという3つの要因が重なった結果、2022年1月28日~30日の3日間における北米映画館全体の興行収入は3449万ドル。2021年9月24日~26日の3877万ドルを下回る、実に4カ月ぶりの低調となった。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(c)2021 CTMG. (c) & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

 週末ランキングの第1位は、前週に続き『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で1100万ドル。前週比-21.5%という粘り強い興行を続けており、北米累計興収は7億3588万ドルだ。公開から7週、一度だけ首位を奪われた以外は6週にわたりトップの座を守り続けている。北米歴代興収ランキングでは変わらず第4位だが、第3位『アバター』(2009年)の記録まで約2400万ドルと迫った。なお全世界累計興収は17億3888万ドル。中国では未公開ながら、海外興収は10億ドルの大台を突破した。

 第2位『Scream(原題)』は、公開初週こそ『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を圧倒したものの、3週目となった今週末は前週比-39.8%の735万ドル。北米累計興収は6213万ドルと製作費の2500万ドルを大幅に上回っており、またシリーズ前作『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』(2011年)の3818万ドルもはるかに超える成績にはなったものの、一時は『スパイダーマン』に次ぐ興行的カンフル剤になることも(規模は違えど)期待されただけに、その後の減速ぶりには寂しさが残る。

 もっともランキング全体で注目すべきは、かくも「弱り目に祟り目」の状況ながら、前週比の下落率が低めにとどまった作品がいくつか存在すること、そして劇場再公開が始まった一部作品が興行的好転を見せていることだ。

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