『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が他の作品と違う理由 ヒロイン・関水渚の功績
「本物も偽物もない。信じればそれが真実」
シリーズ最新作『コンフィデンスマンJP 英雄編』の公開を記念して、1月15日にフジテレビ系『土曜プレミアム』にて地上波初放送される『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(2020年/以下『プリンセス編』)は、冒頭のダー子(長澤まさみ)の台詞がひとつのテーマになっている。つい、できない言い訳を探してしまう私たちに、ダー子が優しく語りかけてくれるのだ。「私たちは、何にでもなれる。なりたいと思ったものになれる」と。
連続ドラマから始まった『コンフィデンスマンJP』シリーズは、さまざまな手口を使い、悪党から大金を騙し取っていく“コンフィデンスマン”たちの活躍を描いてきた。視聴後のスカッとする感覚は、近年のエンタメ作品のなかでも随一だろう。毎回、「また騙された……!」と思いながらも、ハラハラするスリルを楽しんでいる自分がいる。
ただ、劇場版第2弾として公開された『プリンセス編』は、これまでのシリーズとは一線を画した作品だったように思う。作品を観終えたあとに残ったのは、心がじんわりとほぐれていくような優しい感情だったのだ。
物語は、世界有数の大富豪・フウ家の当主が亡くなったところから始まる。彼が遺した莫大な遺産を狙い、ダー子、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の3人が、華麗にコンゲームを仕掛けていく……とここまでは、従来の流れと同じだ。しかし、子猫ちゃん(=ダー子たちの手下)として、コックリ(関水渚)が加わったことで、物語はハートフルな方向へと舵を切ることに。その結果、『プリンセス編』は新たなファン層を獲得。興行収入は38.4億円となり、前作を上回るヒットを記録した。
本作の主人公は、言わずもがなダー子である。しかし、“ヒロイン”は、間違いなくコックリだった。コックリは、身寄りのない陰気な女の子。ひょんなことからダー子に拾われ、子猫ちゃんとしてチームに加わることになる。何を聞かれても、無言で頷くことから、“コックリ”と名付けられた彼女は、ダー子の手によりプリンセスに仕立てられていく。そして、類を見ないほどの優しさを武器に、周囲の心を動かしていくのだ。