アニメ『プラネテス』は一生の財産にもなりうる作品だ Eテレでの再放送開始に寄せて

 現実の世界もそうであるが、宇宙開発は国によってその意気込みの差が出てしまう分野だ。アメリカ、ロシア、中国といった大国が中心となって開発を進めており、日本もそれに追従する形となっている。一方で後進国には宇宙開発に進出することがなかなかできないという現実もある。こうなれば、将来的に宇宙開発による富が発生しても、得をするのは先進国ばかりで、発展途上国や宇宙開発の後進国との格差は広がるばかりだろう。

 そういった社会構造に目をつけたのがアニメ版だ。今作では様々な宇宙開発に関する思想が溢れているが、テロリストも含めて誰もがみんな各々の正義の上に行動していることがわかる。第11話「バウンダリー・ライン」では宇宙開発後進国である南米エルタニカという国からきた宇宙服開発者の物語であるが、終盤に呟かれる「ここからは国境線なんて見えないのに」というセリフには、思わず目頭が熱くなる。

 また、会社内の軋轢などサラリーマンの日常もリアルに描いている。それが間違いだとしても上司の言うことは聞かねばならないのか、それとも個人の正義を通すべきか。そういった葛藤をも描いた第18話「デブリ課、最期の日」では、普段コミカルで頼りないキャラクターが「宇宙を守るデブリ屋なんだ」と行動する姿に、普段のサラリーマン仕事で悶々としたものを抱える人々にも大きな希望を与えてくれる。

 宇宙という広大な空間を舞台に、社会、会社、そして人間までを描き抜いた『プラネテス』は、決してどれ1つも蔑ろにはしなかった。どこの描写を見ても感動することのできる作品であり、NHK のEテレで放送されるのはいいきっかけだと思って、若者たちは広大な世界を夢見るハチマキの苦悩を、社会で戦う大人たちにはそのキャラクターたちの生き様を見てほしい。決して後悔することはない、一生の財産になる作品の1つだと筆者は断言したい。

■放送情報
『プラネテス』
NHK Eテレにて、1月9日(日)19:00〜放送
キャスト:田中一成、雪野五月(現:ゆきのさつき)、折笠愛、子安武人、緒方愛香、後藤哲夫、伊藤舞子、加門良、渡辺久美子、檜山修之、倉田雅世、若本規夫、小林恭治
原作:幸村誠
企画:内田健二、上埜芳被、松本寿子
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン:千羽由利子
コンセプトデザイン・設定考証:小倉信也
メカニカルデザイン:高倉武史、中谷誠一
美術監督:池田繁美
色彩設計:横山さよ子
撮影監督:大矢創太
編集:森田清次
音響監督:浦上靖夫
音楽:中川幸太郎
オープニングテーマ :「Dive in the Sky」作詞・作曲:酒井ミキオ、歌:酒井ミキオ
エンディングテーマ :「Wonderful Life」作詞・作曲:酒井ミキオ、歌:酒井ミキオ
プロデューサー:河口佳高、湯川淳、植原智幸
監督:谷口悟朗
製作:サンライズ、バンダイビジュアル、NHKエンタープライズ
(c)幸村誠・講談社/サンライズ・BV・NEP
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/planetes/ts/9QQZ2Q783Z/

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