『犬王』『すずめの戸締まり』など、2022年は注目のオリジナルアニメ映画が盛り沢山

2022年注目のオリジナルアニメ映画

 一説によると2022年の寅年は「成長する」という意味があるらしいが、2022年はアニメ映画が豊作の兆しがある……と、毎年同じことを言っているような気がしてくるが、注目作が多いのも確かだ。2021年の映画興行を振り返れば、現在もなお快進撃を続ける『劇場版 呪術廻戦 0』をはじめとして『シン・エヴァンゲリオン劇場版』や『竜とそばかすの姫』などのアニメ映画が映画興行全体を大きく盛り上げていた。今回は2022年に公開される注目作を、原作のないオリジナルアニメ映画を中心に紹介していきたい。

『グッバイ、ドン・グリーズ!』

『グッバイ、ドン・グリーズ!』(c)Goodbye,DonGlees Partners

 まずは2月18日に公開される『グッバイ、ドン・グリーズ!』だ。こちらは『宇宙よりも遠い場所』(通称『よりもい』)などで知られるいしづかあつこが監督・脚本を務め、キャラクター原案に吉松孝博など、チームよりもいメンバーが再結集した作品となっている。キャストには花江夏樹、梶裕貴、村瀬歩と、人気実力を兼ね備える若手男性声優3人が少年たちの一夏の物語を盛り上げていく。

 こちらは東京国際映画祭で上映された際に鑑賞したが、鑑賞後には劇場が大きく広がったかのような印象を受けた。いしづかあつこ監督は「『よりもい』は南極を目指しながらも描いているのは少女4人の半径20メートルの世界だった。次に外に向かう物語を選択した際に主人公が男の子になった」と発言しているが、まさにそんな印象を受ける。若い観客はさらに広い世界を求め、歳を召していても挑戦したいと思わせる。公開直後には多くの人が褒め称えるような力と爽快感に満ちた作品だった。いしづかあつこ監督は他の過去作も高く評価されており、今作で優れた才能が1人でも多くの人に知れ渡ってほしいと願うばかりだ。

『雨を告げる漂流団地』

『雨を告げる漂流団地』(c)コロリド・ツインエンジンパートナーズ

 新しい優れた才能という意味では『雨を告げる漂流団地』も紹介したい。こちらは2018年に公開された『ペンギン・ハイウェイ』を手掛けた石田祐康監督とスタジオコロリドの最新作となる。石田監督は学生時代に制作した『フミコの告白』や『rain town』が高く評価され、国内外の賞を多く受賞するほか、30代前半とアニメ監督としては若手であり、今後の活躍が期待される才能の1人だ。

 近年は劇場公開と配信が同時に行われる例があるが、こちらの作品も劇場公開とともにNetflixで配信されることが発表されている。現段階では配信日や国内外の配信範囲も発表されていないが、日本国内のみの興行だけでなく世界市場に向けて羽ばたいていくためのチャレンジだろう。それらの動きが今後どのような形で日本アニメ界に発展をもたらすのかも含めて、その大きな挑戦と変化に注目したい。

『犬王』

『犬王』(c)“INU-OH” Film Partners

 若手に負けじとベテランの名匠たちも新作の公開を控えている。東京国際映画祭で多くのアニメファンに高く評価されたのが、初夏に公開予定の湯浅政明監督の『犬王』だ。『夜明け告げるルーのうた』が世界有数のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭にて、最優秀賞にあたるクリスタル賞を受賞。また『映像研には手を出すな!』が文化庁メディア芸術祭の大賞に選ばれるなど、国内外で高い評価を受ける湯浅監督の新作とあって、注目度が高い。物語は南北朝から室町期に活躍した能楽師、犬王を主人公とした、ミュージカル色のある作品となっている。

 キャラクター原案を務める松本大洋とは、松本が原作漫画を書いた『ピンポン THE ANIMATION』で湯浅が監督を務めており、原作の味わいを活かしつつも自由に動き回るアニメ表現に多くの絶賛の声が寄せられた。また脚本は『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、『アンナチュラル』(TBS系)などを手掛けた野木亜紀子が務めるなど、座組みの時点でも注目度が高い。松本大洋のキャラクターという実績のある大きな魅力と、野木亜紀子という新しくタッグを組む才能の掛け合わせ、そして音楽と独特の作画技術の融合した新しく力強い湯浅作品像に期待したい。

『すずめの戸締まり』

『すずめの戸締まり』(c)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

 そして音楽と作画技術の融合といえば、忘れてはいけないのは先日発表された秋頃公開予定の新海誠監督『すずめの戸締まり』だろう。『君の名は。』『天気の子』と一躍日本アニメ界の寵児となった新海監督の新作とだけあり、発表と同時にTwitterなどのSNSをはじめとして大きな驚きと期待の声が巻き起こった。こちらはまだ発表されていることは少ないが、新海誠が脚本を担当し、キャラクターデザインに田中将賀、作画監督に土屋堅一、美術監督に丹治匠などの新海作品では欠かせないメンバーが揃っている。

 新海作品といえば写実的で美しい背景などの作画技術も魅力であるが、同時に多くの観客が心待ちにしているのが、音楽を務めるアーティストの存在ではないだろうか。新海は初期作では天門の美しいピアノ音楽を中心に物語を練り上げ、また『君の名は。』など近年の作品ではロックバンドRADWIMPSの楽曲で、観客の心を鷲掴みにした。楽曲の魅力と映像の魅力がミックスされ、高揚感と感動を提供してくれる監督だけに、いまだベールに包まれているアーティストの発表も楽しみに待ちたい。

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