『ミラベルと魔法だらけの家』3姉妹の描き方に込められた、新たな呪縛からの解放
ミラベルは、未来を見ることのできるおじのブルーノの協力によって、姉のイサベラとハグをすることが家族を救うと知る。普段から仲の悪かった姉妹であったが、イサベラもまた、家族にとって良い娘であろうとするために、自分を抑えて生きていたことがわかり、ふたりは自然にハグしあうことで、マドリガル家は前に進み始める。
イサベラは「家族のために生きる」とかそのために「女らしくある」ということに縛られており(つまり伝統的家族観のために保守的であろうとしていたのだ)、好きでもない男性と結婚しようとしたり、周りからみて好ましい服装や見た目を無理に選択しているところがあった。その無意識のいらだちから、ミラベルにあたっていたのだ。
彼女がそれまでは華やかなバラの花を咲かせていたのに、トゲトゲのサボテンに自分の本来の姿を見て、自分の好きに生きようと解放される場面を見て、『アナ雪』のエルサを思い出した。
この映画では、ミラベル、イサベラとともに、ルイーサの呪縛も描かれる。ルイーサもまた、怪力を使って家族のためになりたいと思っていたが、その重圧でつぶれそうになっていたのだ。
3姉妹の魔法、つまり能力の描き方は、単に能力を手に入れ前向きに、人のために使いましょう、そのための障壁(ガラスの天井)を取り除きましょう、というものではない。
むしろ、能力というものは、誰にでも等しく与えられているものとは限らない。また能力を与えられているものにも、苦悩はあるということを描いている。
この3姉妹を見ていると、能力もそれを得るための努力も自分にはコントロールできない環境によって左右されるものであり、能力のあるなしで人間の価値を決定すべきではないということが指摘されているように思える。その視点は、これまでのプリンセスやヒロインにはない新たなものであったのではないだろうか。
■配信・公開情報
『ミラベルと魔法だらけの家』
ディズニープラスで配信中、一部劇場で公開中
監督:バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ
音楽:リン=マニュエル・ミランダ
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