山田裕貴らが体当たりでコントに挑戦 『志村けんとドリフの大爆笑物語』は大人たちの青春
新型コロナウイルスが我々から奪い去ってしまったものは計り知れないが、日本を代表するコメディアンの志村けんさんの訃報には日本中が悲しみに暮れた。
その志村さんの半生を描いた『志村けんとドリフの大爆笑物語』が、12月27日21時からフジテレビ系で放送される。
まず、伝説のコント集団「ザ・ドリフターズ」(以後、「ドリフターズ」)のメンバー役のキャスティングが素晴らしい。主役の志村役に山田裕貴。そもそも当時人気を博していたドリフターズのボーヤ(付き人)から最後のメンバーとして大抜擢され正式加入を果たした志村さんには、年上メンバーたちの既に出来上がった関係性に飛び込んでいけるような可愛げや人懐っこさが必要だっただろうし、とても真面目で素顔は照れ屋だったと言われる志村さんと山田のハニカミ顔はどことなくリンクする。
加藤茶役を演じる勝地涼は、ビジュアルごとそっくりで、誰とも衝突せずにグループ内で上手くバランサーとして機能する“憎まれなさ”、“ひょうきんさ”までよく再現されていて驚かされた。リーダーのいかりや長介さん役に遠藤憲一という配役もお見事だ。強面でそんなに言葉数は多くはないものの、実際にはよく周囲を見ておりチャーミングなところもある、そんな憎い二面性、懐の深さが遠藤にピッタリだ。
そこに高木ブー役の加治将樹、仲本工事役の松本岳が加わると、どうしてだろう、このアンバランスさでもって不思議と調和がとれていたドリフターズの面影がたちまちそこに立ち上がるのだ。
そしてそのメンバーで全力で体当たりで臨むコントも容赦がなく、作中出てくるいかりやさんの造語を交えた言葉「コントは喧嘩だ。演技じゃなく“体戯(タイギ)”だ」をそのまま体現してくれる。あまりに息ピッタリで“コントの演技”ということを忘れてしまい、ただただ“コント”として楽しませてもらえる。緻密に設計されているゆえの“必然性”や“勝算”はありつつも、メンバー同士が互いを信じてその場で思いっきりやり切るからこその“偶発性”が加わり、さらには客席からの笑い声、熱気も相まってとんでもないエネルギーを持った“生き物”が生まれ、“怪物”になり客席を、お茶の間を飲み込んでいく様子がはっきり見えた。
名作コントの「威勢のいい風呂屋」や「ひげダンス」も阿吽の呼吸でしっかり再現されており(「再現」という言葉が相応しいかどうか迷う程、元祖をリスペクトした形で見事”彼らのコント“になっているように思える)、見応えしかない。今観ても、いつ観ても笑顔にさせてくれること請け合いだ。