2021年の年間ベスト企画

小野寺系の「2021年 年間ベスト映画TOP10」 いまだ衰えないアメリカ映画変化の流れ

 だが、2021年の一本を選ぶとすれば、アメリカ映画ではなく、イタリア映画になってしまう。『The Hand of God』は、フェリーニなどイタリアの伝説的映画監督の強烈な作家主義を受け継ぎ、時代錯誤的ともいえるアプローチをとってきたパオロ・ソレンティーノ監督の作品。まさに映画芸術の金波銀波に身を浸すかのような、圧倒的な映像の数々に身を浸す体験は、まさに愉悦としか言いようがない。そして、同じくイタリア映画にインスパイアされた『グリード ファストファッション帝国の真実』は、そこに現代の社会問題を投影した点が斬新だった。

 ノルウェーのブラックメタルバンドの陰惨な事件をモデルにした『ロード・オブ・カオス』、『ドライブ・マイ・カー』とともにワールドクラスといえる日本映画となった『すばらしき世界』、そして、意外な展開の数々と愛すべき描写によって、ちょっと変わった若者たちの痛みをポップに綴っていく青春映画『ディナー・イン・アメリカ』も、ぜひとも観てもらいたい。

■配信情報
Netflix映画『The Hand of God』
Netflixにて独占配信中
監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:フィリッポ・スコッティ、トニ・セルヴィッロ、テレーザ・サポナンジェロ、マーロン・ジュベール、ルイーザ・ラニエリ、レナート・カルペンティエーリ、マッシミリアーノ・ガッロ、ベッティ・ペドラッツィ、エンツォ・デカーロ、ソフィア・ゲルシェヴィチ
リノ・ムゼーラ、ビアージョ・マンナほか

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