『ラストナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト監督が語る、60年代映画と#MeToo
「影響を受けた60年代の映画をひっくり返してみたかった」
ーー監督のフィルモグラフィーを眺めてみると、女性が主人公というのも珍しいですよね。
ライト:友人たちや評論家からも「女性の主人公で映画を撮ってみたらどうか」とよく言われることがありました。それとは別に、今回は60年代のイギリス映画からインスピレーションを受けたのが大きかったですね。若い女性が夢や成功をつかむためにロンドンに行くんだけど、その野心や向上心のために、逆に罰せられたり捨てられたりする映画がよくありますよね。当時の男尊女卑的な考え方や女性搾取をそのまま映し出したような作品ですね。この映画では、それをひっくり返してみたかったんです。現代の若い女性が同じように夢を追ってロンドンに行くんだけど、そこで60年代にロンドンにやってきた若い女性の夢を見るというアイデアにつながっていく。そういう背景で、2人の女性が主人公になったわけなんです。
ーー数々の60年代の映画が参照されているように、映像のルックも60年代感を感じるところがありましたが、描かれているテーマは#MeToo時代にも通じる、非常に現代的なテーマです。
ライト:悲しい事実ですが、ショービズの世界にはこの映画で描かれているようなことが、100年前から現在に至るまで存在するわけです。この映画はそのダークサイドを描いているとも言えます。ここ数年の#MeTooムーブメントによって、少しは声を上げやすい社会になったと思いますが、60年代にそういう経験をした方は、声を上げることすらできなかった。そのような事実が歴史に埋もれてしまったのはとても悲しいことです。そのせいで、キャリアだったり人生そのものが短命に終わってしまった方もたくさんいます。そういう事実が、この映画のインスピレーションにもなっています。それに、たとえ60年代の話を描いても、どうしても現代の話になってしまうんです。なぜかと言うと、60年代から根本的なことはそんなに変わっていないから。悲しいことですが、それが事実です。いろいろ変化の兆しは見えているので、少しずつでも変えていかなければいけないと思います。
■公開情報
『ラストナイト・イン・ソーホー』
TOHOシネマズ 日比谷、渋谷シネクイントほかにて公開中
監督:エドガー・ライト
脚本:エドガー・ライト、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
製作:ティム・ヴィーヴァン、ニラ・パーク
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、トーマシン・マッケンジー、マット・スミス、テレンス・スタンプ、マイケル・アジャオほか
配給:パルコ、ユニバーサル映画
2021年/イギリス/カラー/デジタル/英語/原題:Last Night In Soho/R-15
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