荒牧慶彦、和田雅成らが好演! 『カミシモ』に詰め込まれた“2.5次元”の魅力 

 漫画、アニメ、ゲームなどを原作・原案とする舞台コンテンツの総称「2.5次元舞台」。1974年に宝塚歌劇団が上演したミュージカル『ベルサイユのばら』が起源と言われており、90年代の『聖闘士星矢』や『美少女戦士セーラームーン』など人気漫画のミュージカル化を経て、2003年からスタートしたミュージカル『テニスの王子様』がブームの火付け役になった。

 現在はストレートプレイとミュージカルの二軸で展開されている『刀剣乱舞』や、12月に舞台版と同キャストで映画化されるMANKAI STAGE『A3!』をはじめ、年々タイトル数や動員観客数も増え、市場規模は拡大し続けている。今年2.5次元舞台を中心に活躍する若手俳優37名が東京ドームで野球大会『ACTORS☆LEAGUE』を開き、コロナ禍でありながら15,000人の観客を動員したのも、その熱狂的な人気ぶりを物語っていた。

 そんな2.5次元の世界を牽引し、人気・実力ともにトップクラスの若手俳優たちが集結したドラマ『あいつが上手で下手が僕で』(通称『カミシモ』)が毎週水曜日の深夜に日本テレビにて放送中だ。

 舞台となるのは、将来のない芸人や問題のある芸人が“島流し”されるお笑いライブハウス「湘南劇場」。そこは、「遭難劇場」と揶揄される寂れた劇場だった。

 『カミシモ』は上田誠主宰のヨーロッパ企画が手がける“原作”のないドラマだが、多くの人がハマる2.5次元の魅力が詰め込まれた作品だ。というのも2.5次元舞台では、キャラクターが学校の部活やアイドルグループなど何らかのチームに所属しているパターンが多く、複雑に絡み合った人間関係が描かれる。シリーズを通して、困難にぶつかりながら友情や絆が深まっていく過程を追うことができるため、気づけば「沼にハマっていた」という人も多いだろう。さらに役者同士も他作品での共演経験が多く、信頼関係を築き上げた出演者による人間ドラマは見応えがある。そんな2.5次元の特徴が本作には活かされており、基本的にコメディでありながら、4組のお笑いコンビたちが繰り広げる青春群像劇が胸を打つ。

 メインとなるのは、湘南劇場にたどり着いた本作の主人公・時浦(荒牧慶彦)と、そこで出会った劇場イチお調子者の島(和田雅成)によるコンビ「エクソダス」。2人は共にピンで活動していたが、シュールで人に伝わりづらい時浦のネタに島が惚れ込んだことでコンビが結成された。時浦のこだわりの強さ故に開きがちな観客との溝を、コテコテ関西弁の切れ味鋭い島のツッコミが埋めていく漫才は耳に心地よい。

 時浦を演じる荒牧は、まさに2.5次元界のトップランナー。本作でも女装姿を披露しているが、中性的な顔立ちでどんな2次元のキャラクターにも成り切る。単純にビジュアル面での完成度だけではなく、優しい顔と冷酷さを併せ持つキャラクター(舞台『憂国のモリアーティ』モリアーティ役)から、カリスマ性のある人気お笑い芸人(『「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」Rule the Stage -track.3-』の白膠木簓役)、大人しくて気弱な駆け出しの役者(「MANKAI STAGE『A3!』」月岡紬役)など幅広い役どころを歌やダンス、殺陣と共にこなす実力派だ。

 相方の島を演じる和田も、ミュージカル『薄桜鬼 志譚』の土方歳三役や、「おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME~」カラ松(F6) 役など人気作に続々と出演。精悍な顔つきと力強い佇まいが観るものに安心感を与えるほか、殺陣の技術にも優れ、舞台上で放つ輝きは凄まじい。一転して素の和田は親しみやすいキャラクターで、サービス精神旺盛なところが島との共通点でもある。そんな荒牧と和田は舞台『刀剣乱舞』をはじめ、数々の作品で共演。阿吽の呼吸で繰り出すボケとツッコミに、互いへの確かな信頼を感じる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる