『アナと雪の女王』がその後の映画に与えた4つの影響 更新された“プリンセス”の定義

3.孤高のエルサが多様性社会に与えた共感

 『アナ雪』が生んだ最大のキャラクターは、王国の第一王女であるエルサだ。触るものをすべて凍らせてしまう彼女は、昔ならアナを脅かす悪役として描かれていた存在だった。(実際、最初は悪役の予定だった)。だが本作の斬新さは、エルサの魔法を「悪」ではなく、人とは違う「個性」としてとらえたこと。そしてこの映画のもうひとりのヒロインにしたことだと思う。社会から疎まれる「個性」ゆえに孤独な生活を強いられ、自ら部屋に閉じこもり人をよせつけないたエルサ。そんな彼女が心を解放し、「私はありのままでいい」と歌う「レット・イット・ゴー」は、ジェンダーや国籍など、多様性社会に生きる人々に共感を与えたと思う。

 その後、ディズニー映画における多様性は進化を続けた。2016年に公開された『モアナと伝説の海』では、それまでスレンダーなプリンセスのスタイルが、より筋肉質でリアルな体格に変化している。

4.映画館で「レリゴー♪」! ミュージカル映画の楽しさを教えた

 日本でも大ヒットした「レリゴー♪」をはじめ、名曲揃いの「アナ雪」。公開後、映画館で観客が歌を歌いながら鑑賞する「シング・アロング」といわれる上映が人気となり一緒に歌えるDVDも発売された。『アナ雪』は、映画で歌う楽しさを人々に思い出させた先駆的作品だと思う。また、前年に公開された実写版の『レ・ミゼラブル』とともに、その後の音楽映画ブームの下地を作った作品だと感じる。

 ディズニー映画はその後も実写版の『美女と野獣』『アラジン』などの楽曲を大ヒットさせ、一方、ハリウッド映画では『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』などが作られて人気を呼んだ。そして2018年には、アカデミー賞主演男優賞を獲得した『ボヘミアン・ラプソディ』が登場。応援上映が流行したことは記憶に新しい。フレディの「エーオ♪」も、今聞くと「レリゴー♪」にどこか似ている気もする。

 公開されて8年が過ぎた今も、映画の続編が公開されたり、ミュージカル化された舞台が上演されたりと、話題が尽きない『アナ雪』。2020年のアカデミー賞の授賞式では、続編の主題歌「イントゥ・ジ・アンノウン」が世界9カ国のシンガーによって歌われた。その魅力はまだまだ色あせそうにない。

■放送情報
『アナと雪の女王』
日本テレビ系にて、11月12日(金)21:00~22:59放送
※放送枠5分拡大 ※本編ノーカット
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
製作:ピーター・デル・ヴェッコ
脚本:ジェニファー・リー
音楽:クリストフ・ベック
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