伊藤沙莉、ヒロイン起用が止まらない理由は? “女ともだち”的な気質に注目

 ドラマ『有村架純の撮休』(WOWOW)に、「女ともだち」という回がある。1話ごとに有村架純の架空の休日模様が綴られていくドラマだが、その第2話では伊藤沙莉が架空の親友・優子として登場し、長年の付き合いがあるように見える親密さや深い絆のある関係性を醸し出していた。多忙を極める女優の友達をいたわりながら、親友ならではの距離感で時には有村架純に苦言を呈する。1話だけの物語だけれど、この回を観たときに「女ともだち役」としての伊藤沙莉のポテンシャルの高さに驚いたのを覚えている。

 そもそもなぜか「女ともだち」のイメージが強い役者だ。もはや出演作すべてを追うことは困難なバイプレイヤーである伊藤沙莉の、特別に多い役柄が「女ともだち役」ということではない。それでも、印象に残っている役がいくつか思い出される。

『パンとバスと2度目のハツコイ』(c)2017映画「パンとバスと2度目のハツコイ」製作委員会

 今泉力哉監督作の映画『パンとバスと2度目のハツコイ』では、主人公の市井ふみ(深川麻衣)の友達、石田さとみ役を伊藤沙莉は演じていた。さとみは学生時代にふみに対して想いを寄せていたが、今は結婚もして、子どももいる人として登場する。かつて恋心を抱いた相手に、数年ぶりに再会するという難しい役柄。それでも伊藤沙莉は、片思いの相手であり友だちでもある“あわい”の感情をごく自然体に表現していた。

 思い返せば、キャリア初期の『女王の教室』(日本テレビ系)では“いじめっ子役”を演じていたとして回想されることが多いが、志田未来扮する主人公・神田和美の“友達”としての一面も大いにあったことを忘れてはならない。伊藤沙莉が演じる“女ともだち”は、単なる友だちではない。友だちと何かの間で揺れていたり、時には友達以上の空気感を提示する。

 少し角度を変えると、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)で伊藤沙莉が担ったナレーションも、どこか大豆田とわ子を近くで見守る友達のような雰囲気があった。それは人柄なのか、キャラクターなのか、いずれにしても伊藤沙莉が有している「女ともだち」的な“気質”が、役に侵食している感覚を持つことが多いのだ。

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