『おかえりモネ』最終回まであと2話で放り込まれた未知の告白 忍び寄るコロナ禍の現在も

 国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された、2020年1月14日。菅波(坂口健太郎)は、百音(清原果耶)がいる気仙沼から東京へと戻っていった。

「来年の春にまたこっちにくる」「楽しみにしてます」

 そんな何気ない会話でさえ、“未来”を知っている私たちには切なく響く。あれから約2年が過ぎた今、ようやく少しずつ日常は戻り始めているが、第6波に向けて油断はできない状況だ。菅波は呼吸器専門の医師だから、しばらく百音とは会えなくなってしまうだろう。“ニコイチ”の2人ならきっと大丈夫。そう確信していても、百音の元から去る菅波の背中を追いかけて引き止めたくなってしまう。

 『おかえりモネ』(NHK総合)第117話。百音は遠藤(山寺宏一)や高橋(山口紗弥加)たちに気象情報の投稿アプリとコミュニティーFMを連携し、双方向にやり取りをして災害時の避難行動に繋ぐことはできないかと提案する。震災の時も災害FMを通じて道路の復旧から、個人的な愛猫との再会までたくさんの情報を分け合った記憶がある地元の人たちは、百音の提案に興味を示してくれた。不可抗力の出来事に対峙するため、何ができるかを一緒に考える百音たち。そこに訪れたのは、東京の大学生・水野(茅島みずき)だ。

 水野は大学で町づくりを学んでおり、ボランティアのため一時休学して気仙沼に移り住んでいた。しかし、「外から来た人間に何ができるんだろう」と葛藤したのちに志半ばで東京へ戻ってしまう。久しぶりに市民プラザに顔を出した水野をみんな歓迎するが、当の本人は気まずそうな様子。そんな水野に、百音は「また会えてすごく嬉しい」と素直な気持ちを伝える。

「何ができるとかじゃなくて、水野さんが短い時間でもまた心に来てくれたってことが大事だし。もうそれだけでいいんだなって」

 そう語る百音の表情は、以前とは考えられないほど穏やかだ。この日のラジオ放送で、菅波の元患者である宮田(石井正則)が演奏して聴かせてくれた「ダニー・ボーイ」を流す百音。この曲は戦地に子供を送り出し、どうか無事に帰って来てほしいと願う親の気持ちを表現しているとも解釈できる歌だ。

 登米にいた頃、水野と同じように「何かの役に立つこと」に囚われていた百音にサヤカ(夏木マリ)がかけた「死ぬまでも、死んでからも本当は何の役にも立たなくていい」という言葉を思い出す。大事な人には、愛する人には、元気でいてほしい。たとえ離れ離れになったとしても、生きてまた会えるだけでいい。そんなシンプルで一番大切な思いを、私たちは未曾有の出来事に日常を脅かされて初めて気づく。

関連記事