吉高由里子×松下洸平×井浦新、撮影現場で感じる“愛情” 『最愛』は“心”で演じる

「この作品が、最後でもいいと思えるぐらいの意気込みで」

――『わたし、定時に帰ります。』『MIU404』『アンナチュラル』とそれぞれ新井プロデューサーとドラマ作りを経験されてきたと思いますが、今回オファーを受けた際、どのようなお話をされたのでしょうか?

吉高:新井プロデューサーから「今までにない吉高由里子を見せたい」と言われました。もともと『わたし、定時で帰ります。』の撮影で向井理さんが演じる元婚約者の晃太郎が倒れたときに起こすシーンがあって、そのときの表情を見てパッとひらめいたとおっしゃっていました。そのときの絶望感漂う顔が良かったみたいで。こちらとしては「どうぞ絶望させてください。雨降らしの似合う描写でお願いします」という気持ちです(笑)。

松下:僕は『MIU404』にゲスト出演させていただいた半年後くらいにまたお声がけいただいて。今の吉高さんのお話にも近いんですけど「今までにない松下洸平が見たい」と。

吉高:みんなに言ってるんじゃないのー(笑)? 新さんは?

井浦:(手を振って「言われてない」の顔で)……。

吉高:(手を横に)ポイポイポイだって(笑)!

松下:(笑)。でも、そういう新しい一面を引き出してもらえるのは、俳優にとってはすごくチャレンジングで貴重な経験なので、2つ返事で「やらせていただきます」と。一方で「本当に僕で務まる役なのか」というプレッシャーもありました。なので、今はもうこの作品に命をかけるぐらいの、この作品が最後でもいいと思えるぐらいの意気込みで挑んでいます。

井浦:僕は4年前に『アンナチュラル』という作品で参加させていただいて、「またいつか仕事をすることになったら、今度はどんな表現ができるんだろうな」と淡い夢みたいなものは持っていたんですけど。『アンナチュラル』のキャストたちがけっこう新井さん、塚原さんとお仕事していくのを見ながら、なかなか自分に声がかからないのを「これは絶対に嫌われた」「何かをやってしまっている」「要注意人物だと思われちゃってる」「これはもう忘れられてるな」と、だんだんネガティブな気持ちになっていたところ、声をかけていただけたので、とにかくうれしかったです。腐らずに済みました(笑)。

俳優の芝居を受け止めてくれる強さと「人」を描こうという気概

――新井プロデューサー、塚原監督のドラマ作りは、ここが違うなと感じる部分はありますか?

吉高:いろんな監督さんがいて、いろんなやり方があっていいと思うんですけど、塚原監督は現場でどんなに遠くても自分で走って「こうしたい」と伝えてくれるところが特徴的だなと。助監督さん越しに伝えられることもあるんですけど、走ってきて直接「今のはすごくいいと思う」と言われると愛情を感じます。「今のはこういう意図もあるけど、こうしてみたらどうかな」と絶対に演技について否定しないところも、同じ方向を見ているんだとわかる瞬間です。新井さんは一見するとギャルっぽさもあって、一般的にイメージされる“敏腕プロデューサー”っていう感じではないんですけど、いざ現場に立つと「絶対これがやりたい」という具体的なものがあって指示も迅速で的確で、それを形にする仲間がいる人柄もあって。そのギャップがカッコいいなと思います。

松下:僕が感じたのは、作り手の目線と視聴者の目線の両方を持っていることです。塚原監督には「引き算の演技」を教えてもらいました。「驚いたり、うれしかったり、悲しかったりするとき、表情よりも心のほうが変わっているから、あまり表情だけで伝えようとしなくていいんだよ」と。新井さんは本当に作品全体のことを俯瞰して見ていて、僕自身『最愛』という作品に入り込み過ぎて、自分の演じる大輝が合っているかわからなくなってしまうこともあるんですけど、そういうときに新井さんは冷静に答えてくださるのが心強いです。

井浦:僕も洸平くんが感じたように、心を大事にした芝居をさせてくれる監督だなと塚原さんに対して思っています。もちろんテクニカルなところが必要とされる場面もありますけど、それでも「涙が出る」とト書きで書かれていたとしても、「出なかったら、それがその時の心の在り方なんだからそれでいい」と、ちゃんと俳優の芝居を受け止めてくれるという強さがあるなと。『最愛』で言えば、誰が犯人かという面白さもしっかり描きながらも、たくさんいる登場人物それぞれが大切な「最愛なるもの」をちゃんと抱えていて、人と関わりあって生まれてくるドラマをしっかり作ってくださるところは、本当に素晴らしいなと思っています。みんなの「人」をちゃんと描こうとする姿勢が塚原監督は長けているなと。また新井さんも同じようにそこをしっかり大事にするドラマ作りをしているから、2人が作る作品は誰か1人だけの物語じゃなくて、中心にいる人たちに関わる周りの人たちの物語もしっかり描いて「人間の物語」になっている思うんです。やりたいことのフォーカスが合っている、研ぎ澄まされているんだなと感じます。ただ、僕はお二人のことをすごいなと思うんですけど、みんなで褒めすぎると神のようになってしまうんでね。それはそれでまたお二人に逆に失礼かなって。本当はそろそろ「ここが足りない」って言っていきたい気持ちもあるんですけど、今のところ見つからなくて(笑)。それくらいお二人は、オリジナリティがあるってことが最大の魅力なんじゃないかなって思います。

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