オダギリジョーの破壊力に拍手 『オリバーな犬』に感じる90年~00年代ドラマの過剰さ

『オリバーな犬』の過剰さに拍手

 先日、テレビで香川照之がオダギリジョーのことを「あの男、頭おかしい」と評していた。もちろん褒めているのである。

 兄弟役で共演した映画『ゆれる』(2006年)の撮影時、いきなりテストでふたりを隔てるアクリル板にパイプ椅子を投げて傷をつけたことを例に出し「最初のテストのみんながまだ緩いときに衝撃的なことをするのが芝居の醍醐味だなと思った」(1枚しかないから扱いに注意してと言われているにもかかわらず)「つっこんでいくのはオダギリくんハートが強い」と香川を感心させたオダギリジョー(9月28日放送『バナナサンド』(TBS系)より)。

 彼が脚本を書き監督・編集までした3回連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)は、まさに素敵に頭おかしくてハートの強い人物ならではの内容で、いまどき(いい意味で)コレやる?ということのオンパレード。いっときも目が離せず凝視し続けてしまった。

 11年前に行方不明になった女児・北條かすみ(玉城ティナ)が遺体で発見された(発見時は23歳)。山中で彼女を発見したのは巷で話題のスーパーボランティア小西幸男(佐藤浩市)。一般市民が活躍している一方で、大殺界中でついてないことばかりの鑑識課のハンドラー青葉一平(池松壮亮)はさしたる活躍もできていない。パートナーの警察犬・オリバー(オダギリジョー)と共に振り込め詐欺の捜査途中、オリバーが物騒なものを発見する。

 大筋は北條かすみ事件と一平とオリバーと鑑識課の仲間たち(國村隼、麻生久美子、本田翼、岡山天音)が捜査する詐欺事件であるが、この件の合間に職場のベテラン飼育員・志村(鈴木慶一)、理髪店の店主(細野晴臣)、その客・神々廻(橋爪功)、神々廻の運転手・渡邊(甲本雅裕)、テレビで小西を見るやたらと記憶力のいいダイナーふう犬カフェの店主(嶋田久作)と客・溝口健一(永瀬正敏)、半グレ集団TMTのリーダーでキレ方が危うい宗手(永山瑛太)、橋の下に住んで「押忍」「押忍」が口癖のホームレス(柄本明)などが矢継ぎ早に出て来て話の腰を折っていく。

 彼らは本題に関係あるのかないのか。彼らの多くはオダギリジョーが監督した映画『ある船頭の話』に出演した俳優たちで、やたらと豪華なゲストのように見えるのだが、いや、違う、そこには同じ街に生きる者たちが事件をきっかけに繋がっていくロマンの香りが漂う。この連鎖はEGO-WRAPPIN’の素敵にノリのいいテーマ曲が流れるタイトルバックのアニメーションでちゃんと描かれているから間違いはないはず。

 第1話のおわりの第2話の予告では、「混沌」「狂想」「色欲」「憤怒」「怠惰」「傲慢」と各々の登場人物に7つの大罪のような役割を担わせた思わせぶりな描写があり、事件と彼らに運命的なものが暗示されているようで次回が待ち遠しかった。

 第2話になると一平からダイナーの客・溝口に比重がやや移っていく。元警察官で現在フリーライターの溝口は一平と同じ占い師(香椎由宇)に占ってもらっていて、やはり大殺界中だった。彼は北條かすみ事件を調べていて、暴力団組織関東明神組のリーダー(松重豊)にその件で話を聞きに行くがあしらわれた末、足を負傷して松葉杖取材を余儀なくされる。

 大殺界でついていないかもしれない溝口は、「鈍器」や「バールのようなもの」とは何かに思いをめぐらせる。「いまの時代・バールを知っているやつは少ないんじゃないか」と言う溝口の科白こそ、このドラマの価値を物語っているように筆者は感じた。

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