“はみ出さないキムタク”が見られる? 木村拓哉の新機軸となった『マスカレード・ホテル』

『マスカレード・ホテル』木村拓哉の新機軸

代表作多数、芝居のイメージも多彩、木村拓哉は的を絞らせない

 木村はさまざまな職業の役に挑むことで、自身のイメージを決定づけることなくここまで活動してきた。役の印象が定まらないから、「木村拓哉は何をやっても木村拓哉である」と言われるのではないだろうか。

 たとえばドラマ『あすなろ白書』(1993年/フジテレビ系)は当初、共演・筒井道隆と役が逆の予定だったそうで、木村が陰のある掛居保を演じる予定だった。しかし木村は、クールに思われがちな見られ方を変えたかった。筒井も好青年役が多かったため、お互いに話し合い、亀山千広プロデューサーらと相談の上で役を交換。その結果、木村が人懐っこくてお調子者な取手治役におさまった。当時から木村は、周囲からどのように見られているかきっちり自己分析し、演じるキャラクターについて考えていたと推測される。

 書籍『ジャニ研!ジャニーズ文化論』(2012年/原書房)では筆者の大谷能生、速水健朗、矢野利裕が、「木村が出演するドラマはかなり意識的に職業ものとして作られている」と指摘。総理大臣、検察官、ホッケー選手(2004年放送『プライド』)、美容師(2000年放送『ビューティフルライフ 〜ふたりでいた日々〜』)、パイロット(2003年放送『GOOD LUCK!!』)などのタイトルを挙げ、同じく役としていろんな職業に臨んできた織田裕二やトム・クルーズと比較し、木村の多彩さを評価。速水は「キムタクのやる職業が憧れの対象になる。『ロングバケーション』(1996年)を見てピアノを始めたり、『ビューティフルライフ』を見て美容師に憧れたり」と記述している。

 代表作がいくつもあり、観る者によって芝居の捉え方が変わり、憧れのキャラクターも人それぞれ違う。的を絞らせないところが木村の本当のすごさなのではないだろうか。『マスカレード・ホテル』でも、序盤は長髪で髭面だったが、美容師の手でさっぱりとした見た目に変身。刑事とホテルマンというまったく違う職業をつとめ、前述したように人間的な変化が生まれる。ひとつの映画のなかでも、木村はいろんな側面をみせてくれる。

 新作『マスカレード・ナイト』は、ホテルで開催される仮装パーティーの日が物語の舞台となる。木村は同作でどんな装いを見せてくれるのか。良い意味でこちらの予想を裏切ってくれることを期待したい。

■放送情報
『マスカレード・ホテル』
フジテレビ系にて、9月18日(土)21:00~放送
出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、菜々緒、生瀬勝久、松たか子、石橋凌、渡部篤郎他
原作:東野圭吾『マスカレード・ホテル』(集英社文庫刊) 
脚本:岡田道尚
音楽:佐藤直紀
監督:鈴木雅之
(c)2019 映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 (c)東野圭吾/集英社

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