千葉真一さんが日本映画界に遺したもの フィルモグラフィーからその功績を振り返る

 俳優の千葉真一さんが2021年8月29日に亡くなった。東映入社後、1960年から役者としての活動をスタートすると、深作欣二監督や石井輝男監督らとタッグを組み、東映映画の一時代を牽引。さらには俳優としてだけではなく、JAC(ジャパンアクションクラブ)を設立し、多くの人材を育て、プロデューサー、アクション監督としても活躍。後にも先にも現れないであろう、唯一無二の映画人だった。海外にもその名は広がり、世界各地で追悼が捧げられている(参考:千葉真一さん死去に海外でも悲しみの声広がる ハリウッドに与えた影響の大きさを知る)。映画評論家のモルモット吉田氏は、千葉さんの役者としての魅力を次のように語る。

「長らく見ることが出来なかった中島貞夫監督作『日本暗殺秘録』をニュープリント版を観たとき、若き日の千葉さんの芝居に引き込まれたのを覚えています。本作の千葉さんは、小沼正という血盟団事件のテロリストを演じているのですが、演技的には拙い部分もありつつ一心不乱に思いつめてテロへ傾倒していく若者を演じていて、その熱気と純粋な目の力が凄まじかった。千葉さんのフィルモグラフィーを振り返ると、前半部分の60年代~80年代の出演作は、所属していた東映という映画会社の流れが、千葉さんの出演作を見るだけでわかります。現代劇とギャングアクション、実録やくざ映画に、空手ブーム、それから大作時代劇へと、各時代を彩った中心的な作品に必ず出演しています。その後は、角川映画を経て、JACを中心にして作った作品が並ぶ。そして、ハリウッドへ。千葉さんを追うだけで日本のアクションがどう始まって広がり、どこで限界があったのかが見えてくると思います」

 世界各国でも千葉さんの訃報がニュースとなったように、「サニー千葉」の名で千葉さんは海外でも活躍。そのスケールの大きさを吉田氏は次のように語る。

「アクションはもちろんですが、千葉さんは演技者としても際立つものがありましたから、シリアスな芝居も、コメディもこなせるところがすごい。身体と演技を自在に駆使していたことで、フランシス・フォード・コッポラから声がかかったりもしていましたから、アクションに傾倒しすぎたことを惜しむ声もあります。私は今でもアクション以外での演技も、もっと観たかったと思っています。海外では、70年代から石井輝男監督『地獄拳シリーズ』や、中島貞夫監督『東京-ソウル-バンコック 実録麻薬地帯』など、海外にも届く作品を自らも企画に携わりながら作っていったことが、後年、クエンティン・タランティーノらとの仕事につながります。トニー・スコット監督、タランティーノ脚本作『トゥルー・ロマンス』には、主人公が映画館でサニー千葉主演の『激突!殺人拳』を観たあと、映画館の外でマネをする場面もありますし、『実録麻薬地帯』のポスターも劇中に登場します。まさに70年代の仕事が今につながっていったことを象徴しています。それだけに、『キル・ビル』に出演したのも必然でしたし、それ以降、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』や『SUSHI GIRL』に千葉さんが登場したときはうれしかったですよ」

 JACには現在も活躍を続ける錚々たる俳優たちが所属していた。千葉さんには、人を育てる力、人を惹きつける、稀有な魅力が備わっていたと吉田氏は続ける。



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