『賢い医師生活』S2第9話は3つのテーマが交差 物語はクライマックスに突入

 シーズン2も大詰めの『賢い医師生活』第9話は、いくつかのテーマをパズルのように組み合わせながら、コメディと心温まる物語を同居させた。日本でもNetflixの総合1位(8月21日)となり、物語がクライマックスに突入するにつれて注目度も上昇している。

 病院内卓球大会が開かれ、肝胆膵外科のイクジュン(チョ・ジョンソク)チームは、準決勝で映像医学科のシン教授(ユ・ジェミョン)と対戦する。ソウル行きの深夜バスで再会したジュンワン(チョン・ギョンホ)と会う約束をしたイクスンは、発熱し救急医療に来院する。なかなか会う時間が取れないギョウルとジョンウォン(ユ・ヨンソク)、ミナとの関係についてゆっくりと考えるソッキョン(キム・デミョン)。そしてソンファ(チョン・ミド)は、隔年の誕生日にだけ与えられるボーカルチャンスを得る。

 いくつかのテーマとは、1.全ての医療従事者に光を当てる、2.触媒としての手術、そして、3.スタート・アゲイン。卓球大会には病院内の様々な医局が参加している。その中の1つ、映像医学科のシン教授を演じたユ・ジェミョンは、『梨泰院クラス』の長家の会長、『秘密の森』の検事、『ヴィンチェンツォ』のヒロインの父親など、韓国ドラマを数本観た経験があれば必ず印象に残っている顔。近作の重厚な演技からは想像がつかない軽妙な動きで笑いを誘ったユ・ジェミョンは、シン・ウォンホ&イ・ウジョンが発掘した名優の1人だ。演劇出身で舞台監督やドラマ・映画の小さな役を演じていた彼の最初の大役が、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』の5家族の父親で、ダンス好きな高校教師役だった。これで『応答せよ1988』で父親役を演じた4人全員がカメオ出演したことになる。たとえスクリーンタイムが短い役でも慎重に役者を選び、主役級の役柄にも知名度ではなく脚本や演出とのシンクロニシティを重視する彼らのドラマ作りが、救急医学科のエピソードを交え「全ての医療従事者に光を当てる」テーマとつながっている。

『恋のスケッチ~応答せよ1988~』

 第9話では、5人の医師の手術シーンが1つのシークエンスで描かれ、手術という医療行為がクローズアップされる。個別の施術でも、当直中のイクジュンとジュンワンが交通事故に遭った患者の手術を協働する。シン教授とイクジュンは患者の予後を2年間見守ってきた。1件の手術にたくさんの医師と専門家が関わる様子からも、第一のテーマが反復されている。S2は、特に近々の2回は医師と患者の診察が時間をかけてじっくり描かれていた。フェローのギョウルは後輩のレジデントに、施術の思わしい結果が出ない患者に対して取るべき方法を質問する。その答えは、「施術で治らないから手術しかない」。停滞する人間関係も同様で、ジュンワンとイクスンの思いを推し量ったイクジュンは荒療治に出る。第8話のラストの誤送信メールが触媒となり、ソッキョンは自分のペースで考えをまとめようとしている。そして、水たまりを越える際に手を繋いだことで友情と恋愛の違いを認識するソンファ。医師や看護師は診療と施術を重ね、究極の選択の手術を施した後は予後を経過観察し、患者の全快を手助けする。ハードルのような水たまりを越える手伝いをしたイクジュンは、「頑張ろう。ちゃんとゴールしろよ」と言う。ジョンウォンも、ギョウルが気持ちの整理をつけ全てを打ち明けるのを静かに見守ることにする。人間関係における“手術”は触媒に過ぎず、当人が向き合うことが最善で賢明な治療となる。

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