『TOKYO MER』現実にも通ずる“命の選別”描く 喜多見の過去も明らかに 

 悪夢のような状況に追い討ちをかけるように新たな崩落で道路が寸断。レスキュー隊の到着まで30分。それに対して、ERカーの予備バッテリーは残り10分。ギリギリの状況で患者の命を守るために喜多見が取った方法は、自らの生命を危険にさらすことだった。非常用電源を復旧するさなか、最期を悟ったのか、喜多見はメンバーに椿との間にあったことを打ち明ける。喜多見からすれば患者を守っただけだが、そのことで逮捕・投獄され、テロ組織の一員と見なされてしまった。喜多見が「本当にすみませんでした」と詫びた直後、病院に明かりがともり、喜多見からの通信が途絶える。

 降りしきる雨の中、無音があたりを支配する様子はまるでドラマの終焉を思わせるようだった。沈黙に抵抗するかのように心臓マッサージを続ける音羽が、物言わぬ喜多見に投げかける一言ひとことが見ているこっちにもまっすぐに刺さった。「どんな命でも救う」と言って椿を助けた喜多見の思いを誰よりも知っていたのが音羽で、もどかしさと自らが負った職責の板挟みになりながら、必死に喜多見の背中を追いかけてきた。だから喜多見も、何も言わなくても全てわかっている相手として、音羽に全幅の信頼を置いてきた。たとえ自らが裏切られる結果になっても、音羽ならきっとMERをあるべき方向に導いてくれる。音羽の「待っているだけじゃ救えない命があります」という言葉は、喜多見の考えが正しかったことを証明していた。

 なんだかとても美しいものを見せられた気がするが、現実に戻ると一刻の猶予もならない状況が目の前に広がっている。「待っているだけじゃ救えない」。1人でも感染者を増やさないために、医療従事者ではない私たちにできることはあるのだろうか? その答えは一人ひとりの行動にこそある。

■放送情報
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、小手伸也、 佐野勇斗、佐藤栞里、フォンチー、佐藤寛太、菜々緒、鶴見辰吾、橋本さとし、渡辺真起子、仲里依紗、石田ゆり子
脚本:黒岩勉
プロデューサー:武藤淳、渡辺良介、八木亜未
演出:松木彩、平野俊一
製作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TokyoMER_tbs/
公式Twitter:@tokyo_mer_tbs

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