『TOKYO MER』現実にも通ずる“命の選別”描く 喜多見の過去も明らかに 

『TOKYO MER』が描く“命の選別”

 MERがいてくれたら。災害現場に駆けつけて医療活動を行う彼らの存在が、今ほど必要とされている時はない。『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)第8話では、医療崩壊と自然災害の危機に瀕した現在の日本を映し出すような描写に思わず息を呑んだ。(※以下の文章にはドラマ本編の内容に関する記述が含まれます)。

 前話で姿を現したエリオット・椿(城田優)。国際的テロ組織LP9のメンバーは、なぜ喜多見(鈴木亮平)に接触を図ろうとしたのか? 椿から喜多見に宛てられたメールは「『どんな命でも救う』相変わらずですね、先生」と再会を匂わせる内容だった。公安が喜多見をマークする中、八王子の病院で停電による電源喪失事故が起きる。現場へ急行するERカーの車内で、音羽(賀来賢人)の発した一言がチームの危機を招く。

 「私たちは互いの命を預けるような場面を何度も経験してきました。喜多見チーフが我々に隠しごとをしていたのならば看過できません」。テロ組織との関与を尋ねる音羽に喜多見は沈黙で返す。喜多見の沈黙には理由があり、MERが正式に承認されるまで秘密を守ると赤塚都知事(石田ゆり子)と約束していた。しかし、音羽は「今後私はあなたの命令には従わず、自分の判断で行動します」と喜多見に宣言。築き上げてきたチームワークにひびが入り、不穏な空気のまま現地に到着する。

 停電と土砂崩れにより病院の非常用電源が落ち、患者全員を転院搬送させなくてはならない。過去最大級の豪雨に見舞われ、感染拡大で病床が逼迫する現実を思い起こすのに十分なシチュエーション。ドラマの設定は病床数40人程度の小規模病院だが、それでも電気系統が遮断されれば何人も命の危険が迫る患者がいる。現実に起きていることは搬送先が見つからず何時間も救急車の中で、あるいは自宅で待機し、その間必要な処置を受けることもできない。また家屋を流され、避難先で心細い思いをしている人も多い。

 真っ暗な病院でかろうじてERカーから持ち出した電源で患者の状態を確認しながら、なんとか全員を外に連れ出そうとするMERの隊員たち。閉じ込められてしまった手術室のドアをこじ開け、患者をストレッチャーに乗せて運ぶ途中、勤務医の1人が怪我をしてしまう。待合室のソファに寝かせられたおばあさんが、「電気が足りないなら私の(装置)を外してね。若い人たちを助けてあげて」と夏梅(菜々緒)に懇願する。命の選別という言葉が頭をよぎる。医療機器はそこにあるのに使うことができない。突然、何もない状況に放り出され、生命の危険に直面する。ぞっとするような状況だが、現に生じているのはこういう事態である。

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