藤原竜也はなぜ“ヤバいキャラ”がハマるのか 巧みな人物造形で魅せる演技力

 小説に書いたことが現実になる。映画『鳩の撃退法』は俳優・藤原竜也の現在地を知ることができる作品だ。直木賞作家・佐藤正午の代表作を映画化した本作で、主人公で小説家の津田伸一を演じるのが藤原である。

映画『鳩の撃退法』
映画『鳩の撃退法』

 幸地秀吉(風間俊介)一家の失踪事件が起きる。ひょんなことから偽札をつかまされた津田は、裏社会のドンである倉田(豊川悦司)に命を狙われる。地方都市を舞台に、想像が現実を追い越していく推理エンターテインメントの主役として、藤原以上にうってつけの人材はいない。

 「天才」「怪優」……藤原竜也を形容する言葉は多い。15歳で故・蜷川幸雄に見出されて舞台デビュー。その後、蜷川演出の舞台をはじめ、映画『バトル・ロワイアル』、『デスノート』、『カイジ』、『ST 赤と白の捜査ファイル』(日本テレビ系)、『リバース』(TBS系)で主演を務めてきた。今年に入ってからも、ドラマ『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系)、劇場版『太陽は動かない』、吉田鋼太郎演出のシェークスピア戯曲『終わりよければすべてよし』など主演作が相次いでおり、世代を代表する俳優として活躍を続けている。

 役者としての藤原を言い表すのに、卓越した演技力という言葉がぴったりくる。舞台出身の俳優が映像で活躍することは多々あるが、その筆頭格が藤原だ。ドラマや映画のように編集ができず、観客を前にして役者の力量がはっきり現れるのが舞台である。10代から蜷川幸雄の薫陶を受けた藤原は、研ぎ澄まされた集中力と鍛え上げた反射神経で、長らく主演舞台を成功へと導いてきた。藤原の演技は、天衣無縫の自在さと時間芸術としての作品を俯瞰する視点に貫かれている。あるいは、20年以上に及ぶ経験によって培われた役者の本能と言い換えられるかもしれない。

映画『カイジ ファイナルゲーム』予告

 藤原の演技を印象的にしているもう一つの要素が人物造形の巧みさだ。実写化作品で、原作が定義するキャラクター像にどのようにアプローチするかによって作品のトーンが決まることは少なくない。徹底した研究によってキャラクターを俳優の性格や動作へ落とし込む「憑依型」の手法もあるが、藤原の場合はキャラに“寄せる”のではなく、あくまで現実の延長としてキャラクターを構成している。それでいて人物の特徴を絶妙につかんでおり、作品の世界観にも合致。実写版『デスノート』や『カイジ』の主人公は、藤原以外には成立しないキャラクターになっており、原作ファンの支持を得てシリーズ化されたことは周知のとおりだ。

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