磯村勇斗、“ワル”な役柄でも好印象 『東京リベンジャーズ』アッくん役で示した存在意義
ヤンキー役の磯村勇斗しか勝たん!ーーそんなことを声高に叫びたくなる活躍が続く磯村勇斗。この手のキャラクターを演じる磯村を、“推し”としている方も少なくないのではないだろうか。“ワル”な顔をのぞかせながらも、そこにはつねに愛嬌が同居している。そんな彼が『東京リベンジャーズ』で演じているのは、またもワル。それもとびきり愛らしい人物だ。主演の北村匠海ら人気若手俳優陣が大集結している本作で、磯村は自身の存在意義をこれでもかと示している。
『SUITS/スーツ』(2018年/フジテレビ系)で演じた裏稼業に勤しむ若者役もいまだに記憶に新しい磯村。その後に『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系)で限度知らずの不良少年に扮し、この2021年は、『ヤクザと家族 The Family』で夜の街を仕切る怖いもの知らずの若者を、『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)ではカタギとなった主人公を執拗に追う裏社会の人間を演じ上げた。これらの役柄が続いていたことが、“磯村勇斗=ワル”な印象を抱いてしまう理由である。しかしこれらは「好演」とあって、演じるのはワルでありながらも好印象の嵐。作品を観終える頃には、ほかの人物よりも心惹かれてしまうくらいだ。それほどまでに磯村は、自身の演じるキャラクターを魅力的なものとしているのである。それぞれどんなものであったか、簡単に振り返ってみたい。
ヤンキーたちの日常を舞台とした『今日から俺は!!』のジャンルはコメディとあって、“ヤンキーモノ”ながら、作品全体の調子としてはだいぶ砕けたものだった。いや、おふざけが過ぎる作品でもあっただろう。そのなかでも磯村は、「主人公サイド=正義側」に対して、徹底的に「悪」を体現した。何か悪事を企んでいるときの彼の笑みは忘れられない。非常に非情な嫌なヤツ。しかし、磯村演じる相良のワルさ具合が徹底されているからこそ、主人公たちのおふざけを前に空回りし、結果として彼の姿は滑稽なものとなっていた。一周回って相良に肩入れしてしまった人も多いのでは?
時代の流れに翻弄されるヤクザたちの姿を描出した『ヤクザと家族 The Family』での磯村は、現代における社会の暗部を体現。いかにも危なげな若きアウトロー役ではあるが、社会の変化に淘汰される主人公(綾野剛)の背を追い続ける若者であった。社会的にはワルに類される存在だが、主人公サイドに立つ観客にとっての彼は、可愛い弟分のような人物に映ったことだろう。そして『珈琲いかがでしょう』で演じたのも初登場時からキケンな香りをプンプンさせる青年であったが、物語が進むにつれてその理由が明らかとなった。方向性こそ違えど、彼もまた主人公(中村倫也)の背を追う迷える子羊だったのである。“アニキ”に対して滲み出てくる彼の愛情にグッときた方も多いはず。磯村はたんなるシナリオの要請に従うだけでなく、キャラクターの内面にある葛藤を丁寧に練り上げて表出化させ、観客に提示していたと思う。