『ウルトラマントリガー』放送前に復習したい! V6 長野博主演『ティガ』ポイント徹底解説
7月10日より新番組『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』(テレビ東京系)がいよいよスタートする。昨年末まで放送されていた『ウルトラマンZ』から7カ月ぶりのシリーズ最新作で、放送開始前から様々な情報が公開され、ストーリーの輪郭が少しずつ明らかになってきた。2021年はウルトラマン生誕55周年、7月10日はウルトラマンがお茶の間のテレビに初登場した「ウルトラマンの日」ということで、記念すべきタイミングにスタートする『ウルトラマントリガー』への期待は大いに膨らんでいることだろう。
しかし、『トリガー』に期待が寄せられている理由はそれだけではない。平成ウルトラマンシリーズの金字塔となった作品『ウルトラマンティガ』25周年を記念して、当時の設定が踏襲され、現代にアップデートされた「令和版ティガ」とも言われているからである。もちろん、現状では両作品にどれほど関連性があるのか定かではないが、『トリガー』を2倍、3倍と楽しむためにも、改めて『ティガ』のストーリーをおさらいしておく必要がありそうだ。
『ティガ』から一新! “戦い方の礎”とウルトラマンの設定
『ウルトラマンティガ』第1話が放送されたのは、1996年9月7日。何より斬新だったのは、相手の特性に応じて3つの姿に変化できる、いわゆる「タイプチェンジ」の能力。通常はマルチタイプ、力の強い相手にはパワータイプ、素早い相手にはスカイタイプで戦い、能力に応じてボディラインも変化するというのは視覚的にも楽しく、ティガ以降ほぼ全てのウルトラマンに通ずる“戦い方の礎”を築いた。
さらに、それ以前の昭和シリーズで定石だった「ウルトラマン=M78星雲からやってきた宇宙人」という設定を一新し、「超古代から蘇った光の巨人」としてウルトラマンを描いたのだ。超古代戦士のDNAを受け継ぐ主人公=マドカ・ダイゴは、タイムカプセルから現れた地球星警備団の団長・ユザレの言葉を受けて光となり、巨人の石像と一体化することでウルトラマンティガとなる。自分は光なのか、人なのか。ウルトラマンという“特別な存在”であることに葛藤しながらも、信念を貫いて戦い抜き、“一人の人間”として決断を下すシーンは、『ティガ』の大きな見どころだろう。特に第45話『永遠の命』でギジェラを焼き払うシーンは、ウルトラマンであるだけでなく、ダイゴが人間だったからこそできた行動で、何度見ても胸を打たれる。
“光と闇”を通じて描いた人間の生き方
そんな“超古代”というキーワードは『ティガ』を楽しむ上で欠かせない。簡単に要約すると、3000万年前の超古代文明に突如として滅びの“闇”が襲来し、それと戦ったのが光の巨人=ウルトラマンであった。しかし、最後には巨人同士が争うことになり、超古代文明は崩壊。その全てに終止符を打ったのが“闇の巨人”と呼ばれる、カミーラ、ダーラム、ヒュドラの3体だった。しかも映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』によれば、ティガ自身も光を手にする以前、もともとは世界を滅ぼした闇の巨人の仲間だったというのだから驚きだ。現代に蘇ったティガは超古代怪獣や闇の巨人と戦い、3000万年にわたる光と闇の因縁に決着をつけていくことになる。
この“光と闇”というのは、味方と敵/正義と悪という対比だけでなく、「人の心の中には光もあれば闇もある」「人は自分自身で光になれる」という、人間の生き方そのもののことも描いていた。『ティガ』には心の闇に負けて、過ちを犯してしまう様々な人間が登場する。肩書きに見合う優秀な男でなければならないプレッシャーに押し負け、宇宙細胞を悪用した結果、怪獣エボリュウへと変貌してしまったサナダ・リョウスケ(第11話『闇へのレクイエム』)。未来を予知できる超能力を持つがゆえ、周囲から化け物扱いされて、心の殻に閉じこもってしまったキリノ・マキオ(第39話『拝啓ウルトラマン様』)。光の秘密を解明して巨人と一体化しながらも、世界を思うままにしたいという欲望に押し負け、イーヴィルティガとなって暴走してしまったマサキ・ケイゴ(第44話『影を継ぐもの』)。時にはそうした過ちで道を踏み外しながらも、心の中の光を信じ、本当に大切なもののために決断することができれば、前へ進んでいくことができるーーそんな全人類に向けた普遍的なメッセージを放っていたのも『ティガ』の魅力であった。ちなみに、前述したサナダは第47話『闇にさようなら』にて、キリノ、マサキは最終話『輝けるものたちへ』にて、心の闇から救われ、人類のために重要な役割を果たすことになる。
1990年代ならではの“滅亡”というテーマ
光と闇に関してもう1点言うならば、『ティガ』の中で超古代から蘇った闇は、人類を滅亡へと追いやるものだった。地球外からの侵略・征服ではなく、“滅亡”というのはいささかショッキングなワードで、世紀末である1990年代の特撮やアニメに通ずる1つのテーマでもある。
例えば、1995年から公開された平成『ガメラ』シリーズ。古代から蘇った災いの影=ギャオスによって、人類が滅亡の危機に晒されるストーリーで、同じく古代から蘇った怪獣・ガメラに最後の希望を託すことになる。人類が滅ぼされる理由は、大概が「進化しすぎたから」「地球環境にとって害悪だから」というもの。平成『ガメラ』なら金子修介、樋口真嗣、伊藤和典、『ウルトラマンティガ』なら小中千昭、長谷川圭一、右田昌万といった監督・脚本家たちが、特撮を新たな視点で再構築した事実も大きいが、いずれにせよ、こうした滅亡に向かう終末思想(実際に製作陣にあったかは別として)やそれを裏付ける設定に、時代のリアルを感じざるを得ない。
90年代後半というとコンピューター技術の進化も著しい一方、世の中が地下鉄サリン事件や阪神・淡路大震災以降のシリアスなムードを帯びていて、『ティガ』のようなフィクションの物語が妙にリアルに映ったというのも偶然ではないはず。人類が希望を持って宇宙に旅立とうとすれば、それを拒むものが現れたり(第4話『サ・ヨ・ナ・ラ地球』、第41話『宇宙からの友』)、資源を開発しようとすれば環境が悲鳴を上げたり(第12話『深海からのSOS』、第30話『怪獣動物園』)、我々が深く長い視野で考えていかなければならない課題が、数多く浮き彫りになっていく。デマやプロパガンダといった、政治的な情報操作を利用した狡猾な策略が描かれる第34話『南の涯てまで』や第38話『蜃気楼の怪獣』なども、この時代ならではのストーリーかもしれない。
主人公・ダイゴを好演 V6 長野博の存在
そんなハードなSFの裏で、登場キャラクターの魅力にも触れておかねばならないだろう。主人公=マドカ・ダイゴを演じたのは、長野博(V6)。ジャニーズとして初の特撮ヒーローを演じ、長野の性格がそのまま投影されたような優しい青年・ダイゴを好演。高い身体能力を活かしたスタイリッシュな変身もお手のもので、V6が歌った主題歌「TAKE ME HIGHER」はウルトラマンシリーズを代表する1曲となった。初々しい長野の魅力はもちろんのこと、前述したような葛藤を乗り越えたり、心の奥底で強い意志をたぎらせたり、はたまた映画では敵にボコボコに殴られたり......と、『ティガ』でしか見られない長野の姿がたっぷり詰まっているので、ジャニーズファンにもぜひ再チェックしてもらいたいところだ。
そんな長野演じるダイゴと心を通わせるヒロイン=ヤナセ・レナを演じたのは、吉本多香美。何を隠そう、初代ウルトラマンを演じた黒部進の実娘である(映画『大決戦!超ウルトラ8兄弟』では親子共演を果たして話題に)。レナは優秀なパイロットであると同時に、ダイゴの最も身近な理解者として、最後には結婚して家庭を築いていくことになる。「平成のダンとアンヌ」として昭和シリーズファンからもアツく迎え入れられた二人だが、ここまで濃密にヒーローとヒロインの恋愛・結婚までを描いた作品は、ウルトラマンシリーズ全体の中でも稀有だろう。「戦うだけが全てではない」という真実を見つめる眼差し、優しさや自己犠牲精神など、ダイゴとレナには共通点が多く、テレビシリーズ、そして映画を通して二人の関係がどのように深まっていくのかも『ティガ』の見どころだ。
そして、常に冷静に物事を見つめながらも、時折シングルマザーとしての苦悩を見せるイルマ隊長。現場を仕切るリーダーシップを持つが、酒が飲めず牛乳大好きなムナカタ副隊長。熱血パイロットであるシンジョウ隊員&ギャグ満載の科学担当・ホリイ隊員の名コンビ。優れた頭脳でシステムを管理し、時には感情を露わにしながらも成長するヤズミ隊員など、地球防衛チーム=GUTSのメンバーも実に魅力的。レナとダイゴが穏やかで落ち着いた性格だからこそ、周囲の個性的な隊員たちが全体のテンションを盛り上げ、いいバランスとなっているのだ。各メンバーもストーリーを通して、恋人、夫婦、親子、兄妹、友人......など、様々な関係性を通して成長していくので、そこも楽しんでもらいたい。