『TOKYO MER』鈴木亮平ら、戦隊ヒーローさながらな勇敢さ 賀来賢人とのやりとりも必見

『TOKYO MER』鈴木亮平らの勇敢さ

 主演の鈴木亮平は『天皇の料理番』(TBS系)、『テセウスの船』(TBS系)で印象的な役柄を演じてきただけに、今作が日曜劇場初主演であることにやや意外な印象もある。それでも、本作にかける並々ならぬ意気込みは随所から伝わってきた。鈴木の熱量が乗り移ったかのような喜多見は、ガスが充満する解体現場にもためらわず身を投じる。実は喜多見は少年時代にアメリカで銃乱射事件に遭遇しており、母親は搬送されずに喜多見の目の前で命を落としていた。そのことが喜多見を「患者が搬送されてくるのを待つのではなく、助けを求めている人のところに自ら向かう医師」に変えたのだ。

 赤塚が「TOKYO MERの理念」と言いきる喜多見を中心に、「最悪のチーム」がどのように救急医療のプロフェッショナル集団に変貌していくかは今後の見どころになるだろう。麻酔科医の冬木治朗(小手伸也)、研修医の弦巻比奈(中条あやみ)、看護師の蔵前夏梅(菜々緒)とホアン・ラン・ミン(フォンチー)、臨床工学技士で救命士の徳丸元一(佐野勇斗)は、それぞれの思いを抱えて集結。さらに、喜多見たちをサポートする危機管理対策室の駒場卓(橋本さとし)や千住幹生(要潤)率いるレスキュー隊、喜多見と旧知の間柄の高輪千晶(仲里依紗)などTOKYO MERを取り巻く人々のドラマからも目が離せない。

 なかでも注目は医系技官の音羽尚(賀来賢人)。喜多見との火花を散らすようなやり取りは必見だ。すでに明らかになっているように、音羽はTOKYO MERの解体を目論む厚生労働大臣・白金眞理子(渡辺真起子)が送り込んだスパイ。当初から裏切り者が明らかになっていることに加えて、音羽自身が喜多見への敵意を隠そうとせず衝突は避けられない状況。赤塚や喜多見もそのことを察して、なお困難なミッションを選択したわけで、つまりは正面突破でTOKYO MERを認めさせる以外に道はないのだ。

 政治家同士の利害対立や過去の因縁が渦巻く中で、それでも助ける命があるなら飛び込んでいく。何がなんでも救うという信念は、この時代に特にまぶしく映る。命を救う人間はヒーローだ。『TOKYO MER』はそのことを何よりも雄弁に知らせてくれる。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、小手伸也、 佐野勇斗、佐藤栞里、フォンチー、佐藤寛太、菜々緒、鶴見辰吾、橋本さとし、渡辺真起子、仲里依紗、石田ゆり子
脚本:黒岩勉
プロデューサー:武藤淳、渡辺良介、八木亜未
演出:松木彩、平野俊一
製作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TokyoMER_tbs/
公式Twitter:@tokyo_mer_tbs

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