『恋はDeepに』綾野剛から石原さとみへの一世一代の告白 ラストの急展開に祈るのみ

 ただ、本作を観ていて気づかされるのは、海音ほどの“正体”ではなくとも、みんなそれぞれに誰にも見せられていない“本当の自分”を抱えて生きているのだ。倫太郎が海音に出会って触れ合っていくうちに母親の事故のトラウマを初めて口に出来て、徐々に心に雪解けを迎えたように。三男・榮太郎も、自分が保有する会社の株を全部売ってしまい、思いもかけぬ裏切りも遭って会社が窮地に追い込まれているのを目の当たりに良心の呵責に苛まれている時に、藍花(今田美桜)に自分が一番欲しかった言葉を言ってもらえて、心からの救いを得たように。蓮田トラストの、三兄弟のピンチに追いやられて初めて倫太郎と腹を割って話せた長男・光太郎(大谷亮平)が、忌み嫌っているかに見えた倫太郎への羨望を口にしたように。海音の経歴に疑いの目ばかり向けているかに見えた鴨居研究室の椎木(水澤紳吾)だって、実際には海音を“立派な研究者”と認めていたように。

 みな誰かに言ってほしいのだ。“あなたが何者でも構わない。私の目の前にいるあなたが好きだから”と。自分の目に映るあなたが私にとってのたった一つの真実で、主題歌を歌うback numberの「怪盗」にもあるように「君は今日も明日も君のままでいていいんだよ」と。これほどまでに最上級の愛情表現が他にあるだろうか。

 様々な人間関係に好転が見られ、倫太郎は何らかの決意を胸に母親の形見の指輪を海音に渡そうと彼女の元に向かう。それなのに、海音がこのまま地上にいられるタイムリミットばかりに気を取られていたら、なんとそんなことってあるのだろうか。

 ただでさえ、2人で一緒にいられる時間には限りがあるのに。倫太郎の命と、海音が人間として生きられる時間が天秤にかけられたりするのだろうか。倫太郎と海音がもう離れてしまうことがありませんように。この優しい世界が続きますように。次回の最終話になにか“希望”が見出せますように。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter

■放送情報
4月期水曜ドラマ『恋はDeepに』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:石原さとみ、綾野剛、今田美桜、大谷亮平、渡邊圭祐、橋本じゅん、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)
脚本:徳尾浩司
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:枝見洋子、畠山直人、鈴木香織(AX-ON)、山口雅俊(ヒント)
演出:鈴木勇馬、岩本仁志、伊藤彰記
主題歌:back number「怪盗」(ユニバーサル シグマ)
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/deep/
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