『名も無い日』は大切な人たちの“幸せ”を問う 永瀬正敏と共に見つめる、“喪失”の先

 映画『名も無い日』は、愛知県名古屋市熱田区を舞台に、永瀬正敏、オダギリジョー、金子ノブアキ演じる3兄弟を描いた、愛知県名古屋市発信の映画だ。カメラマンであり熱田区出身でもある、本作の監督・日比遊一に起きた実話に基づいた作品であり、大切な人を失った後、残された人々の葛藤を描いた物語である。そして、重厚な物語を優しく幻想的に包み込むのが、熱田神宮で毎年開催される(2020・2021年は中止となった)「熱田まつり(尚武祭)」の象徴とも言える提灯の灯りである。花火や、365個の提灯を半球状に組んだ「献灯まきわら」が並んだ光景を見るだけでも旅行気分、お祭り気分が味わえる。いつか実際に訪れてみたいものである。

 この、優れた「家族映画」であると共に、名古屋市熱田区の魅力が存分に詰まった映画でもある本作の面白さを、5月17日に行われたオンライン試写で寄せられた感想と共に紹介する。

名古屋・熱田の魅力

 愛知県名古屋市は多くの優れた映像作品を生み出してきた稀有な土地でもある。

 ロケもすべて名古屋で行われたラブコメドラマ『おかげ様で!』を手掛けた中部日本放送、『ヤクザと憲法』『人生フルーツ』など数多くの独自性のある刺激的なドキュメンタリー作品を発表し続けている東海テレビや、『中学生日記』、テレビドラマ『刑事の現場』、『トクサツガガガ』など気骨のあるテレビドラマを数多く手掛けてきたNHK名古屋放送局。そして、メ~テレ製作、深田晃司監督のドラマ『本気のしるし』がその尋常でない面白さから全国的な反響を呼び、劇場公開となり、さらにはカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション2020作品に選出されるという快挙も記憶に新しい。

 また、名古屋観光コンベンションビューローは、フィルムコミッション事業(なごや・ロケーション・ナビ)で映画の誘致に力を入れており、映画『笑の大学』、『SP 革命篇』などのロケ地の「聖地」名古屋市役所はじめ、残存する歴史的建造物や街並みを映画のロケ地として活かすことで、「ロケ地巡り」という新たな魅力を生み出している。

名古屋生まれ名古屋在住の私としては、熱田界隈のなんでもない街並みが嬉しかった
(愛知県名古屋市、女性)

映画の舞台となっていた熱田区はとても魅力的な街だと思った
(愛知県長久手市、女性)

全てのシーンを切り取りたくなる、写真のような映像。いつかロケ地を訪れてみたい
(東京都世田谷区、女性)

 などのコメントが寄せられたように、本作も例外ではない。監督自身の実家を、主人公の実家として撮影しており、監督自身の故郷への並々ならぬ思い入れが詰まった作品でもある本作は、「尚武祭」の風景だけでなく、久々に地元に帰ってきた兄弟たちが喜んで食べる「亀屋芳広」の菓子や、名古屋市出身の女優、岡崎紗絵はじめ登場人物たちの名古屋弁など、随所に監督の「名古屋・熱田愛」が散りばめられた作品でもある。

 例えば、中野英雄演じる味のある主人、大久保佳代子演じる常連客のいる居酒屋がある「神宮小路」。雨降る夜、永瀬正敏と今井美樹演じる、久々に会った同級生2人が言葉を交わすロマンティックな場面を彩る、レトロな雰囲気漂う商店街。カメラマンでもある日比ならではの一際美しいショットの数々が、熱田区自体が持つ街並みの魅力を存分に引き出している。

私は名古屋を訪れたことはありませんが、どこかノスタルジーを感じました
(兵庫県宝塚市,女性)

 その街並みには、誰にとっても愛さずにはいられない、忘れがたい故郷を思わせる何かがある。

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