中村倫也の歌声と声の演技にも注目! 実写版『アラジン』の“面白さ”と“新しさ”を解説

中村倫也の歌声と声の演技にも注目! 実写版『アラジン』の“面白さ”と“新しさ”を解説

 ディズニーによる実写版『アラジン』が、5月21日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にてテレビ初放送を迎える。2019年に劇場公開された本作は日本でも大ヒットを記録し、興行収入は121億円を突破。実写映画1位の好成績を収めた(歴代興収では23位:5月16日現在)。

ちなみにこの年の年間ベスト10は
1.『天気の子』(141億円)
2.『アナと雪の女王2』(133億円)
3.『アラジン』(121億円)
4.『トイ・ストーリー4』(100億円)
5.『名探偵コナン 紺青の拳』(93億円)
6.『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(73億円)
7.『ライオン・キング)』(66億円)
8.『アベンジャーズ/エンドゲーム』(61億円)
9.『キングダム』(57億円)
10.『ONE PIECE STAMPEDE』(55億円)
となっている。

 コロナ禍に突入する前の最後の年でもあり、ディズニー作品が6本もランクインした2019年。実は、興行収入を発表するようになった2000年以降、過去最高の年間興収を叩き出した記念すべき年となった(100億円超えが4本も!)。このように強力なラインナップの中でもトップ3に付けてくるあたり、『アラジン』には作品のクオリティはもちろんのこと、コンテンツとしての“強さ”を感じる。

 まずはやはり、認知度が高いところがあるだろう。アニメ版が制作されたのは1992年(日本公開は1993年)と25年以上前だが、ソフトでの観賞や東京ディズニーシーのアトラクションで知る人、アカデミー賞歌曲賞を受賞した「ホール・ニュー・ワールド」から入っていくなど、様々な導線が引かれている印象だ。何よりランプの魔人ジーニーのインパクトは強く、内容は知らずともキャラクターは把握している層も多かったことだろう(ディズニープリンセスからジャスミンを知る流れもあると聞く)。

 とはいえ、興収121億円という数字は、「1年に1本しか劇場で映画を観ない」層をも動かせなければ、達成できない。では、なぜ『アラジン』は「年イチの1本」になりえたのか? あくまで雑感だが、「何が観られるかわからない」ものよりも、「名の通ったコンテンツ」であるほうが、大衆は動く傾向にある。「確実に面白く、楽しめる」ものは観る前から安心でき、加えて2017年の『美女と野獣』の成功によるディズニー×実写への信頼が観賞欲を底上げした向きもあろう。『レ・ミゼラブル』や『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』などが築きあげたミュージカル映画ブームも影響しているかもしれない。

 さらに、日本でも人気のウィル・スミスがジーニー役を演じる話題性も大きかった。「ウィル・スミスが演じるジーニー」の画像が初公開された際は、見た目が普通の人間と変わらず人々がどよめいたものだが、その後おなじみの肌が青色の姿になって、作品のファンは一安心。本作はインターネットとの相性も良く、どんどん拡散されていった印象だ。また、監督はヒットメイカーのガイ・リッチー。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』のようなダンディズムとスタイリッシュなデザイン性に心奪われたオールドファンから、『シャーロック・ホームズ』シリーズや『コードネーム U.N.C.L.E.』でハマった新規ファンまで、作家性を保ちつつもエンタメ性が損なわれない彼の作品群は、コアとライトの両方に受けるポテンシャルを持っている。

 日本語吹替版では中村倫也、山寺宏一、木下晴香がアラジン、ジーニー、ジャスミンの声を担当。山寺はアニメ版からジーニーの声を務めるレジェンドであり、本人も思い入れが強い作品&キャラクターであることを公言。アニメ版のファンとしては、吹替版をチョイスしたくなったのではないか。

 また、中村はNHK連続テレビ小説『半分、青い。』や映画『孤狼の血』、ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)などで大きくブレイクを果たしたタイミング。もともと舞台経験が豊富な彼はオーディションでアラジン役をつかみ、見せ場の「ホール・ニュー・ワールド」などで美しくも伸びやかな歌声を披露しているほか、決めゼリフ「僕を信じて」などで、ハリがありつつも甘さをたたえた声の演技で魅了。通常の会話→歌唱シーンをシームレスにつないでいくグラデーションの上手さは、フィールドや役の大小・濃淡に関わらずどんな人物(なんなら人以外も)も演じ切ってきた中村の演技経験の豊かさとその中で培ってきたスキルが、ダイレクトに活かされたところであろう。

 木下と共に公開年のNHK紅白歌合戦にも特別出演し、本作を経てさらに俳優としてステップアップした中村。日本公開時から2年が経った今では、押しも押されもせぬトップスターのひとりだが、『100日間生きたワニ』での声優起用や、菅田将暉との楽曲「サンキュー神様」の制作なども、『アラジン』での活躍が導いた部分はあるのかもしれない。そうした意味で、今回のテレビ放送のタイミングで中村の演技を観ると、また違った見え方にもなってくるだろう。なお、9・10月には、約5年ぶりの劇団☆新感線参加となる主演舞台『狐晴明九尾狩』も控えており、さらにパワーアップした歌声を響かせてくれそうだ。

 字幕版だけでなく、吹替版も強力――。ざっと考えただけでも、ヒットする要素に満ちた作品といえるが、歌唱シーンの多さもひとつの特長といえそうだ。中村や山寺、木下が歌う吹替版も捨てがたいが、グラミー賞アーティストでもあるウィル・スミスのパフォーマンスも見逃せない。公開時には、字幕&吹き替えのダブル観賞をした観客も多かったと聞く。確かに、物語は一緒であっても、歌の部分は全く別。新鮮な気持ちで両方を楽しめるだろう。

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