松坂桃李、『あのキス』の設定を成立させる愛の眼差し 井浦新と生み出す“奇跡”

 桃地が語ったわがままで短気、金遣いも人遣いも荒いが、命を削るように作品を生み出し、アンチを気にしたり、困っている人を放っておけない弱さと優しさを併せ持つ巴の印象は、妙が知る娘そのものだ。そして、そんな巴を大好きだと愛おしそうに零す桃地が不謹慎な嘘をつくはずがないと思ったのだろう。妙はようやくオジ巴が本当に自分の娘だと信じ、彼女の好物を振る舞う。再び号泣するオジ巴と、娘の魂が生きていたことに嬉し泣きが止まらない妙。

 桃地の底なしの優しさと巴への愛が次々と奇跡を生んでいく。また、そんな桃地を演じる松坂桃李の主演でありながら共演者を引き立てる演技もこのドラマに奇跡を起こしているように感じた。そうめんを自分のために作り、街中で子供連れの妊婦を助けた巴に感動したり優しく見守ったりと、麻生久美子演じる巴と変わらぬ尊敬と愛しさがこもった瞳を井浦新演じるオジ巴に向ける松坂。だからこそ、オジ巴がどんどん本来の巴の姿に見えてくるし、可愛さが増す。入れ替わりという設定も違和感なく受け入れられるのだ。

 そして、今回からオジ巴の“器”である田中マサオの人物像も少しずつ明らかとなってきた。エグゼクティブ真二(六角慎司)と仲が良かったこと、「息子が暴れる」「お金を必要としていた」など、複雑な事情を抱えていたこと。何よりも衝撃な事実は、巴の通うフラダンス教室の先生・帆奈美(MEGUMI)がマサオの妻だったことだ。しかも、桃地が足をくじいたオジ巴をおぶっているところを運悪く帆奈美に見られてしまった。次週、第4話ではマサオの家族関係にも注目していきたい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■放送情報
『あのときキスしておけば』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送(一部地域で放送時間が異なる)
出演:松坂桃李、麻生久美子、井浦新、三浦翔平、岸本加世子、MEGUMI、猫背椿、六角慎司、阿南敦子、うらじぬの、角田貴志、藤枝喜輝、川瀬莉子、板倉武志、窪塚愛流
脚本:大石静
演出:本橋圭太、日暮謙、YukiSaito
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/

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