若葉竜也、古川琴音ら『街の上で』キャストが大躍進 TVドラマから作家性の強い映画まで 

若葉竜也ら『街の上で』キャストの大躍進

 そして、この好調を生み出したのは、キャスティングの妙であり慧眼でもある。ここからは、メイン6人のキャストについて、この1年の躍進ぶりを具体的に見ていこう。cinefilの今泉監督と本作の発起人でありプロデューサーの髭野純の対談インタビュー(参考:cinefil連載【「つくる」ひとたち】インタビュー vol.14「その場所が在るということは、この映画の強さだと思います」映画『街の上で』今泉力哉監督×髭野純プロデューサー 対談インタビュー - シネフィル - 映画とカルチャーWebマガジン)を参照すると、「今回ご出演いただいたのは、今泉監督が何かしらの形でお会いしたことがある方たちなんです」(髭野)、「会ったことのある人、または憧れていた人が多いですね。全員、自分で好きにキャスティングするというのは実は久しぶりでした」(今泉)と証言している。

 その筆頭といえるのは、本作が映画初主演となった若葉竜也。今泉監督とは『愛がなんだ』や『有村架純の撮休』で組み、本作を経て『あの頃。』でまたタッグ。お互いに全幅の信頼を置いている相思相愛の中であり、若葉にインタビューで話を聞いた際にも「今泉さんとはものを作る上での温度感が近い」(参考:朝ドラで注目度アップ!若葉竜也「大作だろうが自主映画だろうが参加したいと思える作品に出る」最新作『街の上で』で初主演!|ムビッチ)と語っていた。

 そのため、今泉監督のファンであれば“常連俳優”ではあるのだが、NHK連続テレビ小説『おちょやん』(2020年)に出演したことで、お茶の間に一気に浸透。盟友・仲野太賀と共演した『生きちゃった』(2020年)、アカデミー賞国際長編映画部門の日本代表に選ばれた『朝が来る』(2020年)、興行収入12.2億円のヒットを記録した『罪の声』(2020年)、吉沢亮と共演した話題作『AWAKE』(2020年)など出演映画の公開も立て続き、その演技力の高さや存在感を大いに知らしめる1年となった。

 本作でも、「100%受け芝居」と自らが振り返る特殊な役柄を、見事に演じ切った。若葉自身、「悦に入らない」「居心地悪くいる」を標榜し、常にフラットな姿勢で作品や役どころと向き合うタイプ。彼が保ち続けた“鮮度”が存分に発揮されており、演技とは思えない瑞々しさをもたらしている。

 若葉と同じく、『おちょやん』に出演したのが、『街の上で』では友情出演にクレジットされた成田凌(『くれなずめ』(2021年)で若葉と再共演)。『愛がなんだ』で大きく知名度を上げ、2020年は『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』『弥生、三月 -君を愛した30年-』『糸』『窮鼠はチーズの夢を見る』が公開。『街の上で』の公開直近に『まともじゃないのは君も一緒』『ホムンクルス』(ともに2021年)が封切られ、人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のスペシャルドラマ『ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』(2021年)等にも出演。CMにも多く起用されており、急病で入院した清原翔の代わりにドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(2020年/フジテレビ系)に登板した際には、大いに話題を集めた。

 彼の場合は、メジャー大作から作家性の強いインディペンデント映画、あるいはフラットなキャラクターからデフォルメされたクセの強いキャラクターまで幅広く演じ分けるスキルが持ち味。『街の上で』では二枚目の人気朝ドラ俳優をするりと演じつつ、恋愛においては途端に面倒くさくなる二面性も見せ、コミックリリーフ的なポジションもこなした。

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