『ドラゴン桜』は日曜劇場の勧善懲悪を受け継ぐ 道理にかなう桜木流の生徒への寄り添い方

『ドラゴン桜』桜木流の生徒への寄り添い方

 問題が起きた時に周囲や他人を責める「他責」ではなく、自身の原因として捉える「自責」はよく耳にする。しかし実際は、頭でわかっていてもなかなか気持ちが追い付かないものだ。動揺する楓に、桜木は自身の経験を語る。「人生『これ』と決めて突き進んだものが急に失われる。苦しすぎて暴走族で随分暴れた」。その時に桜木を救ったのが勉強だった。「がむしゃらにやってるうちに、これが近道だと気づいた。いつの間にか苦しさも消えた」。食い入るように見つめる楓に、桜木は「お前の道はお前が決めろ」と付け足すことを忘れない。

 無意識に選んできた選択肢を、初めて自分自身の意思で決めた楓。その瞬間、これまでのことは全て過去になった。裏方としてサポートする楓は、自身を陥れたパートナーにも「恨んでない」と言い切る。自分に勝った楓の心は晴れやかで、チームの勝利を祝福できる。たとえ、その輪の中に自分がいなくても。

 桜木は決して特別なことをしたわけではない。対等の立場で自らの経験を語り、最後の選択は本人の手に委ねた。暴走族だった過去を隠さず、高校生だからといって遠慮することもない。そうやって一定の距離を保ちながら、見事に楓を立ち直らせた。「オリンピック選手になるよりも、東大に入る方がはるかに簡単だ」。一見してやさぐれているように見える桜木の寄り添い方は、どこまでも道理にかなっている。

※高橋海人の「高」は「ハシゴダカ」が正式表記。
※鶴ヶ崎好昭の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『ドラゴン桜』
TBS系にて、毎週日曜21:00~放送
出演:阿部寛、長澤まさみ、高橋海人(King & Prince)、南沙良、平手友梨奈、加藤清史郎、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太、西山潤、西垣匠、吉田美月喜、内村遥、山田キヌヲ、ケン(水玉れっぷう隊)、鶴ヶ崎好昭、駿河太郎、馬渕英里何、大幡しえり、深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)、林遣都、佐野勇斗、早霧せいな、山崎銀之丞、木場勝己、江口のりこ、及川光博ほか
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(講談社刊)
プロデュース:飯田和孝、黎景怡
脚本:オークラ、李正美
演出:福澤克雄ほか
製作著作:TBS
(c)TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる