【ネタバレあり】『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は何を描いたか MCU重要作を解説

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を総括

 そして意外だったのは、作品が凶行に走ってしまったジョン・ウォーカーに立ち直るチャンスを与えたことだ。いままでのよくあるヒーローアクション映画ならば、彼が暴走してヴィラン“フラッグ・スマッシャー”に生まれ変わり、ファルコン&ウィンター・ソルジャーがそれに立ち向かうという展開の脚本が採用されたことだろう。だが本シリーズはそれを選択しなかった。これは、先の大統領選に見られたように、政治思想によって分断されたことで融和が急がれている、現在のアメリカの状況を汲んでのことだろう。

 それにしても、本シリーズで描かれたストーリーは、アベンジャーズの行く末を追う上で非常に重要なものとなった。現在、『キャプテン・アメリカ』シリーズの新作映画の製作が準備されているという噂が聞こえているが、本シリーズを観ていることが前提の内容となるはずだ。“スピンオフ”の枠に収まらず、配信ドラマが大作映画と同程度の重みを持ったという事実は、衝撃的ですらある。それは、今後配信事業に力を入れて業界でのシェアを握ろうとする、親会社ディズニーの方針でもあるだろう。また、『ワンダヴィジョン』のマット・シャックマン監督に続き、本シリーズでカリ・スコグランド監督を抜擢しているように、ドラマをメインで演出してきた監督にMCUのドラマシリーズを任せているのも、興味深い方針だ。

 このようなことから、もはやMCUのファンは、今後も続く配信ドラマシリーズを追いかけなくてはならなくなったといえよう。もちろん、このような方針を採用することで、MCUから離れてしまう層も存在することだろう。この賭けがどう転ぶのかも含め、今後のMCUの展開は、ますますスリリングである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■配信情報
ディズニープラスオリジナルドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
ディズニープラスにて独占配信中
出演:アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、ダニエル・ブリュール
監督:カリ・スコグランド
脚本:マルコム・スペルマン
原題: The Falcon and Winter Soldier
(c)2021 Marvel

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