松坂桃李が『新聞記者』と対照的な役に 週末のひと時をブラックな笑いで包む『ここぼく』

 いやはや、なんともスパイスの効いたドラマが始まったものだ。土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK総合)は、週末のひと時をブラックな笑いで包む。あるいは口元にひきつった笑みを浮かべながら、笑うに笑えない夜を過ごした御仁もいるかもしれない。

 正義とか悪とかコンプライアンスがかまびすしい昨今、本作が取り上げるのは危機管理だ。主人公は神崎真(松坂桃李)。元アナウンサーで「名は体を表す」のとおりの誠意あふれる広報マン。ではなかった。彼の武器は無為(無策)。「僕の落ち度になるんですかね」。そう、真は若干34歳でありながら保身に汲々とする小人物。画面の手前の私たちと同じ地平で呼吸しているのが本作の主役なのだ。

 『ワンダーウォール』(NHK総合)やNHK連続テレビ小説『カーネーション』の渡辺あやが脚本を手がけた『今ここにある危機とぼくの好感度について』は、大学を舞台に危機管理という名の隠ぺい工作にひた走る広報担当者を描く。「スポーツっていうのは体を動かすことだと思うんです」。アナウンサー時代に意味のあるコメントを発しなかった真にとって、この世界は複雑すぎるのか、それとも考えることを放棄しただけ? 感情移入の余地のない主人公が、老獪な理事会や内部告発をしたかつての恋人に振り回され、真実を前にして立ち尽くす姿は哀れを誘う。

 どこまでが冗談でどこからが本気なのだろうか。「ただのガセ、さもなくば告発者の勘違い、少なくとも改ざんではなくミスだった」。研究不正をもみ消そうとする理事会のタヌキ親父たちは黒幕と言えば言えるが、痛烈な皮肉とも取れる人物造形はどこかとぼけたテイストで、どちらかと言うと愛嬌のあるキャラとして描かれる。一方で内部告発に立ち上がったみのり(鈴木杏)のキレの良さといったら。「そんなくそダサい交換条件、私は飲みません」「ほんと権力持ってる人たちって、見下してる人間に対して想像力ないよね」「見下すのは勝手だけど、見くびるのはやめたほうがいいよ」。どっちつかずにしか生きられない私たちに強烈な一撃をお見舞いする。