『おちょやん』が描き続ける喜劇への信念 作品のカラーが強く刻まれた戦争描写に

『おちょやん』が描き続ける喜劇への信念 作品のカラーが強く刻まれた戦争描写に

 朝ドラにおける戦争パートの描き方はその作品のカラーが強く反映される。『エール』(NHK総合)では、インパール作戦を中心に生々しい戦争描写が反響を呼び、再放送もされたことも記憶に新しい。

 『おちょやん』(NHK総合)第17週「うちの守りたかった家庭劇」では、太平洋戦争が開戦。明るい作風の『おちょやん』にも戦時下の張り詰めた空気が漂っている。福助(井上拓哉)と百久利(坂口涼太郎)の出征、岡安の幕引き、朝ドラではお馴染みである大日本婦人会も登場する中で、特徴的なのは防空壕にて千代と軽妙な掛け合いで笑いを生んだ花車当郎(塚地武雅)の存在。どん底にまで沈んでいくことで戦争の恐ろしさを伝えた『エール』に比べて、喜劇を題材にした『おちょやん』では生きるのがやっとな時でも……だからこそ、あほみたいなことを言って笑いあう。それが例えつよがりだとしても晴れの明日に繋がっている。そんな千代の強い信念を感じさせる。

 第85話では、解散したはずの家庭劇に一人、また一人と座員が戻ってくる。「雨降って地固まる」と天晴(渋谷天笑)が、「まだ俺の席あるかな」と漆原(大川良太郎)が派手なテロップと効果音とともに登場。千之助(星田英利)は稽古場に潜んでいた座員に驚かされひっくり返るといった笑い声が絶えない再集結に。ラストに姿を見せる一平(成田凌)の「ほんまにあほばっかしやな」という一言が、この家庭劇にはぴったりである。

 一平は京都にある朱雀劇場で公演を打つことを決めた。たとえ鶴亀に手を切られ興行として成り立たなくても、1人でも芝居を観て楽しんでくれる人がいるのならば。座員みんなの思いは一緒。千代は「うちが守りたかった家庭劇はみんなのいてる家庭劇だす」と今が幸せだと告げる。戦時下に幸せと言えること。千代にとってどれだけ家庭劇が分かる。

「うちが何言うても絶対に『ええで』て答えてな。ほんまにこれでよかったんやろか」

 公演前の朱雀劇場で千代が一平に問いかけるこの一言は、第17週頭の第80話で一平が千代に話していたセリフへのアンサーだ。こんなご時世なのに芝居をやっていていいのか。時折、分からなくなった時には一平が、千代が、そして寛治(前田旺志郎)が「ええで」と背中を押してくれていた。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる