『おちょやん』シズは篠原涼子だからこそ演じられるキャラクター 岡安再興の日は来るのか

 今週、岡安最後の日を迎えたNHK連続テレビ小説『おちょやん』。そんな岡安の女将であり、千代の第二の母とも言えるシズを演じるのが篠原涼子。女性の強さと優しさを見事に演じ、ドラマを支える『おちょやん』での篠原涼子の演技を掘り下げてみたい。

 篠原は、アイドルから転身した女優たちの中でも、近年もっとも大成した1人と言え、今やドラマに欠かせない役者として様々な作品に出演。中でもかっこよく、デキる女性を演じることが多く、『ハケンの品格』(日本テレビ系)のスーパー派遣社員・大前春子や、『アンフェア』シリーズのクールな刑事・雪平夏見など、自身の仕事に誇りと責任を持っているからこそ、相手が誰であろうと物事をとズバッと言う芯が通ったキャラクターの印象が強い。そうしたいわゆる“堅物”を愛すべきキャラクターにしてしまうところが、篠原の女優としての特異な部分だろう。

 今回、杉咲花主演のNHK連続テレビ小説『おちょやん』で篠原が演じる岡田シズは、主人公・千代(杉咲花)が9歳の頃に、親に捨てられるように女中奉公に出された、道頓堀の芝居茶屋「岡安」を仕切る二代目女将。常に凛として仕事に対し厳しくも、家族を暖かく見守り、お茶子(芝居茶屋の女中)たちに慕われるカリスマ性もあり、大黒柱と言える頼れる存在という意味で、篠原のイメージにピッタリの役だ。

 千代とのファーストコンタクトは、千代が岡安の前でお茶子とぶつかり「このどあほう! すかたん!」と啖呵を切る姿を見て、のれんの奥から「あほ! すかたんは、あんただす」と睨みつけるという最悪の出会い方。品格のない千代を気に入らず追い返そうとするが、店の主人で夫の宗助(名倉潤)や先代の女将・ハナ(宮田圭子)の説得もあって、渋々1カ月見習い期間を与えるシズ。その後も理由はなんであれ、頼んだ用事を果たすことができなかったことに対し「クビだす!」と言い放つ、できない人は足手まといと言わんばかりな仕事に対するシビアな態度は、『ハケンの品格』の春子を思い出す人が多かっただろう。ただこれは、自分も同じように若い頃から女中として働き、辛さを知っていることや、千代と同い年の娘がいる年齢で芝居茶屋を引き継いだ責任感からくる厳しさと、義理人情で成り立つ世界だからこそ、しっかりした人になってもらうという千代への愛情表現だということは重々理解できる。唯一、暖簾分けしたライバルの「福富」の女将・富川菊(いしのようこ)だけには丁々発止にやりあうところも、『ハケンの品格』で大泉洋だけは茶化していく姿と重なり、篠原ならではのユニークさも発揮されていた。

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