ストップモーションアニメに注目が集まる理由 『PUI PUI モルカー』から広がる世界を覗く

ストップモーションアニメに注目が集まる理由

 『PUI PUI モルカー』が話題沸騰中だ。

 本作は、テレビ東京系にて月曜から金曜の7時30分より放送されている『きんだーてれび』内で、毎週火曜に放送中のショートアニメ。モルモットと自動車が融合した不思議な生き物“モルカー”が人間たちの移動手段として使われている世界で巻き起こる、様々な騒動が面白おかしく描かれている。

 表情豊かでコミカルに動くモルカーたちの可愛らしさや、ダイナミックなカメラワークをはじめとした各種演出のクオリティの高さ、モルカーに乗る人間の一部が現実世界でもありがちな迷惑行為を働き、彼らが痛い目に会うといった少々毒気のある作風などが、子どものみならず大人のファンをも大勢生み出している理由だ。

TVアニメ『PUI PUI モルカー』PV

 “ストップモーションアニメ”という手法で制作されている『PUI PUI モルカー』。これは人形やぬいぐるみ、ミニチュアセットなどを用い、これらを少しずつ動かしていきながら1コマ1コマカメラで撮影。パラパラ漫画の要領で連続させることでアニメーションさせるという手法だ。NHK Eテレの『プチプチ・アニメ』にて放送された、芋虫の生活を描いた『ニャッキ!』などが有名だろう。なお『ニャッキ!』は粘土を用いたストップモーションアニメなので、“クレイアニメ”とも呼ばれている(ちなみに『ニャッキ!』の監督である伊藤有壱氏は、『PUI PUI モルカー』の監督である見里朝希氏の東京藝術大学在学中のゼミの指導教諭であったことが配信イベントにて語られている)。

 実はこのストップモーションアニメという手法で制作された名作・傑作は、ここ数年で着実に数を増やしており、子どもだけではなく、明確に大人もターゲットにした作品も少なくない。今回はそんな近年の傑作ストップモーションアニメを、いくつかご紹介していこう。

【公式】スタジオライカ15年の歴史『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』

 現在世界最先端のストップモーションアニメの技術を有するスタジオといえば、見里監督も影響を公言している、アメリカのライカだ。誰もが驚愕するであろう、自然で活き活きとしたアニメーションによって描かれる映像は、練り込まれた世界設定やストーリーの素晴らしさも相まって、新作が公開されるたびに世界中の権威あるアニメーション作品に送られる賞をいくつも受賞している。

 最新作『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』は2020年に日本でも公開。見里監督がストップモーションアニメの世界を志す切っ掛けになったという『コララインとボタンの魔女』や、日本を舞台にした『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』といった過去作は、Amazonプライム・ビデオやNetflixで配信中だ。いずれもアニメーションのクオリティはもちろんのこと、細部まで徹底的に作り込まれた映像によって生まれる作品世界の豊かさや、奥深いストーリーも世界中で称賛されている。

映画『劇場版 ごん - GON, THE LITTLE FOX -』予告編

 日本のストップモーションアニメも負けてはいない。2020年には児童文学の金字塔『ごんぎつね』に新たな解釈を加えた、八代健志監督の『劇場版ごん - GON, THE LITTLE FOX -』が世界中で高い評価を受けた。

映画「ちえりとチェリー」全国公開決定予告

 『劇場版ごん』は上映時間28分の中編だが、より長い54分という上映時間の作品である、中村誠監督の『ちえりとチェリー』も、素晴らしい作品だ。本作は時間をかけながら全国の公共施設などをまわって上映を行う“スローシネマ方式”で2016年に公開をスタート。2019年には全国の劇場で通常方式の上映も行われている。少女がイマジナリーフレンドのチェリーとの交流を通じて成長する心温まる物語や、チェリーの声優を星野源が演じたことなどでも話題となった。

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