『俺の家の話』介護の“覚悟と苦悩”描いた第3話は好エピソードに ドラマのスタイルも変化?

『俺の家の話』が描く介護の“覚悟と苦悩”

 「介護にまさかはない」。寿三郎(西田敏行)の介護当番の日だったにもかかわらず、家を抜け出しピンチヒッターとしてプロレスの試合に出場した寿一(長瀬智也)。しかしその間に寿三郎は転倒し、病院に運び込まれてしまうのである。2月5日に放送された『俺の家の話』(TBS系)第3話は、“介護”をイベントとして捉えることや、介護を行う家族に必要な覚悟と気遣い。そしてまた、介護を受ける側の苦悩さえもしっかりと描写する好エピソードとなった。

 舞(江口のりこ)が買ってきたシルバーカーに難色を示す寿三郎は、死ぬまでにしたいことが100以上も書かれたエンディングノートを家族に見せる。そこに書かれているのはさくら(戸田恵梨香)と一緒にしたいことばかりで、その中に「家族旅行に行きたい」という消された文言を見つける寿一。そんな中、さんたまプロレスの仲間たちから頼み込まれ、能の稽古を続けながらプロレスラーとしての活動を再開することを決意した寿一は、覆面レスラーの「スーパー世阿弥マシン」としてデビューすることになるのだ。

 プロレスと能の両立を目指そうとする寿一に対し、寿限無(桐谷健太)が毅然とした態度で投げかける「神様の前で言える?」という台詞をはじめ、今回のエピソードでは登場人物たちの言葉ひとつひとつにこれまで以上の重みがある。舞が口を滑らせてしまう「いずれ終わるんだし、楽しまなきゃ」も然り、さくらが後妻業だということがわかっていても寿三郎の理解者として近くにいてあげてほしいと頼み込む寿一が発する「家族にしかできないことがある。でも家族にはできないこともある」という言葉も然り、この両者には介護に向き合う家族のドラマとしてのあらゆるテーマが詰め込まれていると感じる。

 そして何よりも、さくらと散歩に出かけるときに寿三郎が語る「無理しなきゃ二度と能舞台に立てないだろ」という、生きること、自分であり続けることへの強い執着。“要介護1”から“要支援2”になったということは、自分でできることが増え、軽度の認知症の症状もあまり見られなくなったということであろう。そんな寿三郎が、実はさくらが後妻業であることを忘れていた“ふり”をしていたことがわかる終盤。橋の上での2人の会話のシーンは、かなりズシリとくるものがある反面、どことなく微笑ましいシーンでもあったのは、演じているのが西田敏行だからだろうとつくづく感じるわけで。今回のエピソードは、名優の軽やかな演技に一層引き寄せられるものがあった。

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