1980年代と現在がつながる構図に、“真実と嘘”というテーマ 『ワンダーウーマン 1984』を解説

 さらに無視できないのは、“真実と嘘”という、本作のもう一つのテーマである。ドナルド・トランプは大統領選において「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン(アメリカをふたたび偉大な国に)」というスローガンを前面に押し出した。本作でもマックスが“偉大”になることを望み、強大な政治力を手にするように、極端な権力志向を持ったマックスの存在は、トランプに似せていることが意識的に示されている。トランプは大統領就任後も、メディアやツイッターを利用して自身の主張を述べてきたが、政権を担当した3年間で、嘘や疑わしい主張が1万6千回も発信されていると、ワシントン・ポスト紙は報じている。

 本作の冒頭で描かれるのは、幼少期のダイアナが故郷の島で「アマゾン・オリンピック」に出場し、トライアスロン風の競技で“チート”行為を行なってしまうという物語だ。そこで彼女は、嘘で得る勝利には何の意味もないということを知ることになる。ダイアナが石による奇跡の力を最終的に否定したのは、それが結局はまやかしであり真実に反することであると気づいたからである。嘘の力に背を向けて走り出す彼女の力強い足取りには、苦しい現実を受け止める覚悟が宿っているのだ。ワンダーウーマン復活のシーンが感動的なのは、このように過去と現代をつないだ現実の問題への一つの解答が示されているからだともいえるだろう。

 付け加えておきたいのは、本作のスタッフロールの途中でビッグサプライズがあることだ。近年のヒーロー映画は、上映が完全に終わるまで席を立たない方が良いことは常識となっているが、本作のおまけ映像は格別のものとなっている。これも過去と現在をつなぐ感動的なシークエンスである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『ワンダーウーマン 1984』
全国公開中
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、クリスティン・ウィグ、ペドロ・パスカル、ロビン・ライト
配給:ワーナー・ブラザース映画
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