『ワンダーウーマン』で描かれた歴史は現在とリンク 問題や可能性を内包した大ヒット作を振り返る

地上波初放送記念『ワンダーウーマン』を考察

 コミックヒーローの実写映画化作品『ワンダーウーマン 1984』公開にあわせ、前作『ワンダーウーマン』が、2020年12月26日26時よりフジテレビ系『ミッドナイトアートシアター』で地上波初放送される(一部地域を除く)。公開当時、予想以上の大ヒットとなった本作『ワンダーウーマン』は、様々な意味で画期的なものとなったと同時に、いろいろな問題や可能性が内包する映画となった。ここでは、そんな本作を振り返り、その存在が指し示したものを考えていきたい。

 ワンダーウーマンは、1941年より開始されたコミックシリーズのキャラクターであり、強大な力を持つスーパーヒーロー。映像化作品といえば、これまで1975年からのアメリカのTVドラマが有名だった。女性ヒーローが激しいアクションシーンに挑むところが凄まじく、2021年1月8日公開のドキュメンタリー映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』では、当時の撮影でスタントウーマンが実際に高いビルから後ろ向きで落下したり、肌を露出した衣装のままガラスに飛び込んで破壊しながら着地するなど、いまではとても考えられないような現場の光景が映し出されていた。

 その衣装は、いまの目で見ると扇情的な印象もあった。実際、2011年に新たなTVシリーズの製作が計画されていたが、過去のテイストを活かしながら現代風にデザインし直された衣装によって、ワンダーウーマンがバーレスクのショーガール風の雰囲気に見えたために不評を買って、お蔵入りとなった。今回の映画版では、その失敗も踏まえて、キャラクターの設定でもあるギリシア神話のアマゾネスである部分によりフォーカスした衣装となった。

 また、ガル・ガドットの存在無しには今回の『ワンダーウーマン』の魅力を語ることはできない。美しさや気品、長い手足とトレーニングによって身につけたたくましさ、そしてキュートさまでが加わった彼女の魅力のポテンシャルが、新しいワンダーウーマンという役柄にフィットすることで、大きく花開いたといえる。

 そんなキャラクターの魅力によって、本作は大きな反響を呼び、150億円の製作費で、映画製作費の上限を超える250億円の巨費を投じた、同じくDCヒーロー映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の興行収入と同規模の成果をもたらすという予想を超える結果を生むこととなった。そして、女性監督による史上最高のヒット作ともなったのだ。

 本作の監督は、パティ・ジェンキンス。シャーリーズ・セロンにアカデミー賞主演女優賞をもたらした『モンスター』(2003年)の監督として知られている。娼婦の連続殺人犯という女性の主人公を描く衝撃作は、多くの観客を驚かせた。そして、本作『ワンダーウーマン』もまた、意外な主人公像が描かれている。

 ガル・ガドット演じるワンダーウーマンは、驚異的な身体能力を持つアマゾネスの王女として外界から隔絶された女性だけの島に住んでいた。彼女は、ある日、アメリカの軍人スティーブ・トレバーの命を救い出すことで、“外の世界”では大規模な戦争(第一次世界大戦)が起こり、多くの人々がその犠牲になっていることを知る。この原因となっているのが、宿敵である軍神アレスであると考えたワンダーウーマンは、トレバーとともに島を出て、戦争を止めようとする。

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