1980年代と現在がつながる構図に、“真実と嘘”というテーマ 『ワンダーウーマン 1984』を解説

 ヒーロー映画『ワンダーウーマン』(2017年)で女性監督映画最大のヒットという偉業を成し遂げた、パティ・ジェンキンス監督と、主演俳優ガル・ガドットら。そんな彼女たちが大きなプレッシャーとともに挑んだ続編『ワンダーウーマン 1984』は、でアメリカ本国では劇場での上映と配信を同時に行うという変則的な公開となったが、コロナ禍における最大の初動興行成績を達成するという、新たな快挙を生み出した。

 そして内容の面においても『ワンダーウーマン 1984』は、近年稀に見るヒーロー映画の傑作といえるものとなっている。ここでは、そんな本作の内容を考察しながら、何が描かれていたのかを解説していきたい。

 ギリシア神話の女神という位置付けのヒーローであり、長い寿命を持つ“ワンダーウーマン”ことダイアナを主人公とした本シリーズ。第1作は1910年代の第一次世界大戦に揺れるヨーロッパを戦いの舞台としていた。そこで描かれたのは、毒ガスや高性能の機銃など、兵器の進化により大量殺戮が可能となった時代の凄惨な状況だった。多くの兵士が捨て駒とされ、陣地を確保するために大勢の命が奪われていった。ワンダーウーマンはアメリカ軍のパイロット、スティーブ・トレバー(クリス・パイン)とともに、そんな悪夢のような戦争を終わらせるべく尽力することになった。

 続編となる本作『ワンダーウーマン 1984』の舞台となるのは、その名の通り1984年のアメリカだ。ポップな色が街や人々を飾り、現在では下火となっているショッピングモールに人々がつめかけている。そんなモールの強盗の犯罪を華麗に防ぐなど、ダイアナは世を忍ぶ正義のヒーローとして活躍していると同時に、考古学者としてスミソニアン博物館で働いていた。そこに新たな職員である研究者バーバラ(クリステン・ウィグ)と、博物館への寄付を申し出た、石油投資ビジネスで著名なマックス(ペドロ・パスカル)が現れることで、物語は動き始める。

 鍵となるのは、博物館に届けられた謎の石だ。石には神の力が宿されていて、人間の願いを叶える奇跡を呼び起こす。自分のことを地味で人気がないと感じて悩んでいるバーバラは“ダイアナのようになりたい”と、石に願う。一方でダイアナは前作で命を落とした恋人スティーブ・トレバーを蘇らせるという願いを石にこめる。すると、その願いは簡単に叶えられる。バーバラは美貌と人気、スーパーパワーを手に入れ、ダイアナの前にはスティーブが現れたのだ。

 ダイアナは街をめぐりスティーブとともに楽しい時間を過ごし、バーバラも新たな人生を楽しみ始める。だが、石の力には裏があった。奇跡を起こす代わりに、願いが叶った者の“大事なもの”を奪ってしまうのだ。ダイアナはスーパーパワーが弱まり、ワンダーウーマンとしての豪快な戦いができなくなってしまう。

 そんな騒動のなか、石の力を理解しているマックスは、まさに“チート”といえる願いを石に叶えさせる。それは、“自分に石の力を授けてほしい”というものだった。石の能力を自分のものとしたマックスは、人の願いを叶える代わりにパワーや権力を奪っていく。そして、メディアの力を利用することで、全てを手に入れようとする彼のたくらみは急速に実現に近づくことになる。

 力を失ったワンダーウーマンと、ついに国家権力と絶対的な身体能力を手中に収めていくマックス。その背後では、アメリカとソ連の間の冷戦が危機的状況を迎え、核戦争が勃発しようとしていた。ダイアナはふたたび世界を救うため、ある決断をくだして走り出す……。

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