『岸辺露伴は動かない』が止まらない! 「くしゃがら」で高橋一生と森山未來が完璧な“ジョジョ化”

高橋一生×森山未來の完璧な「くしゃがら」

 くしゃがらに取り憑かれて1カ月の十五と対峙する露伴。彼らしくない「気にしない」という選択を露伴は勧めるが、そこから十五は逆上し、あるセリフを口にする。「無理に決まってんだろ。このビチグソ野郎がァーッ!」。

 これは原作では「XXXX野郎がァーッ!」と伏字になっている部分。原作で十五のセリフの中に出てくる「ホーム・アローン」や「ミッシェル・ガン・エレファント」といった固有名詞、モザイクで隠していた禁止用語リストの中の「感電死」や「高圧線」「地震」「津波」といった言葉をひたすら配慮していたのにも関わらず、なぜここで「ビチグソ野郎」(これも第3部に出てくる名ゼリフ)を開くのか。しかも、NHK。それこそ“禁止用語”なのではないのか。といろいろな考えが脳裏をよぎるが、これも製作陣のジョジョ愛という結論に至る(ちなみに、脚本の小林靖子へのインタビューによれば「差別用語じゃないから」とのこと)。

 そして、「ビチグソ野郎」の後にやってくるのが、露伴の“ジョジョ立ち”だ。「親切で言ってるんだぜ。関わる必要もない、お前ごときにだ。このッ……岸辺露伴がッ!」。そう言って露伴は顔半分を覆うように右手をくの字に曲げる。これは原作でも扉絵として描かれ、等身大フィギュアとしても製作された有名なポーズ。漫画のストーリー上には出てこないジョジョ立ちであり、誰も“観た”ことがないからこそ、小説では咄嗟にこの仕草をしていたのかもしれない、というチョイスも絶妙だ。そして、何よりもギャグになっていない、自然な流れのジョジョ立ちに感動すら覚える。それは当然「おれたちにできない事を平然とやってのける」高橋の演技力あってのものである。

 ラストの「おことわり 視聴者の皆様の安全のため、番組内で使用した『くしゃがら』は、実際の単語とは違うものを使っております NHK」という注意書きも、原作のオチを小説版からテレビ版に置き換えたパロディの一つ。ホラー、サスペンスのラストとしても完璧であり、「好奇心は猫を殺す」になぞらえた原作にも忠実だ。

 ほかにも、冒頭で先述したレベルの目線で細かく観ていくと、序盤に露伴が読んでいる新聞の中に「吉良吉影」「派遣ハベスト」といった記載があったり、第1話に続き声優の櫻井孝宏(アニメシリーズの露伴役)がラジオの声で登場していたりと、ジョジョファンの熱狂は続いている。ついに最終夜、30日は第3話「D.N.A」。第1話から縦軸として描かれてきた平井太郎(中村倫也)がフィーチャーされる回であり、最も原作からオリジナル要素が足された物語と聞く。第1話、第2話に続き、驚くような演出を入れてくるのは「コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実」。今夜は「くしゃがら」ピザを食べて、22時のオンエアを待とうじゃあないか。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合、NHK BS4Kにて、12月28日(月)、29日(火)、30日(水)22:00~22:49放送 (3夜連続)
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第1話ゲスト:柴崎楓雅
第2話ゲスト:森山未來
第3話ゲスト:瀧内公美、中村倫也
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
小説:北國ばらっど『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』所収「くしゃがら」
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
撮影:山本周平
照明:鳥内宏二
録音:高木創
美術:磯貝さやか
編集:鈴木翔
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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