篠原涼子、『おちょやん』道頓堀編を牽引した強さと愛情 視聴者の心を打った“母”としての言葉

篠原涼子、『おちょやん』牽引した強さと愛情

 年内の放送が終わったNHK連続テレビ小説『おちょやん』。主人公・千代を演じる杉咲花はもちろん、シズを演じる篠原涼子の演技が光った道頓堀編であった。改めてここまでの内容を振り返りたい。

 口入れ屋に連れられて「岡安」にやってきた千代(幼少期:毎田暖乃)に対して、シズは最初から厳しく接した。シズ自身、幼い頃からお茶子修業で苦労してきたことから、そこには仕事の厳しさを伝えたい思いもあったはず。シズは、商売柄人を見る目も確かである。相手が幼いとはいえ子ども扱いはせず、千代を思うからこそ仕事で失敗をすれば容赦なく叱った。恐らく、シズも同じように、いや女将になるためにより厳しい修業を積んだのだろう。

 千代は「岡安」ののれんをくぐる前から自分を突き飛ばしたお茶子に対して悪態をつくところをシズに見られて奉公を断られそうになっていたし、大事な頼まれごとを時間どおりに果たせずクビを言い渡されたりもした。とはいえ、クビになっても父テルヲ(トータス松本)の借金のせいで一家は夜逃げして、千代には帰る家さえなかった。

 「岡安」には千代がお茶子になってからも女中見習いとして里子(奥野此美)がやってきている。里子は幼いながらも、千代が連れてこられたときのように、かめ(楠見薫)に仕事を教わっている。たとえ千代や里子が辞めたとしても、「岡安」には、口入れ屋によっての紹介があとを絶たないのだろう。貧しい家に生まれた子どもは幼いうちに奉公に出される……そんな時代に千代も、そしてシズも生きていたのだ。

 第1週のタイトルが「うちは、かわいそやない」というくらいで、少女時代の千代は同情されることを何よりも嫌がった。「岡安」をクビになっても、孤独な千代には当然行く当てもない。神社で震えながら雨宿りをしている千代をシズの母で先代の女将ハナ(宮田圭子)が迎えに行き、千代はシズやシズの夫・宗助(名倉潤)、ハナたちに自分の境遇を話し、「岡安」に置いてほしいと頼んだ。そこへ「捜索願いの出ていた女の子のことで」と巡査が現れ、「この子に間違いないですか?」と聞かれ、シズは「間違いのう、うちのおちょやんだす」と答えた。それがシズから千代が「岡安のおちょやん」であり、「岡安の千代」だと心から認められた瞬間だった。

 シズを演じる篠原涼子は「岡安」のことを常に第一に考える完璧な女将であると同時に、シズが内面では葛藤を抱えていること、心の芯にある温かさや弱さを絶妙なさじ加減で見せている。また、過去の恋の相手である延四郎(片岡松十郎)とのシーンでの変わりようはすごかった。“強い”女将としての姿から一変、延四郎と初めて出会った頃の10代の少女のような可憐さがあった。

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