The Wisely Brothers 真舘晴子の『かもめ食堂』評 背中を押される人生の味

 The Wisely BrothersのGt./Vo真舘晴子が最近観たお気に入りの映画を紹介する連載「考えごと映画館」。最近観たオススメ映画を、イラストや写真とともに紹介する。第4回は、現在Netflixで配信中の荻上直子監督作『かもめ食堂』をピックアップ。(編集部)

 いつも帰り道のバスの中で、夜ご飯を何にしようか考える。今日はバスに乗る手前の横断歩道で、何となく「あんかけ」にしたいと思い、「卵とじあんかけうどん」にしようと決めた。

 スーパーに寄ると、これまで別のスーパーに行かないと置いてなかった大好きな春菊、そして割引された牛肉を見つけたので、「すき焼きうどんにしよう」と変更した。

 それを食べながら、Netflixで最近配信がはじまった『かもめ食堂』を観た。

 『やっぱり猫が好き』(フジテレビ系)という1980~90年代にやっていたテレビドラマを、今年はよく観ていた。小林聡美、室井滋、もたいまさこが3人姉妹の設定で、一緒に住む家のリビングで繰り広げるシリーズだ。アドリブが多く、くだらないテーマが最高で、少し自分たちバンドメンバーとのやりとりと似ていて大好きになった。小林聡美は当時25歳ほどで末っ子役。このドラマの役の天真爛漫なキャラクターが新鮮だった。

 さて、『かもめ食堂』はこの連載でこれまで取り上げさせてもらった映画の中でも、沢山の人が観ていたことがある作品だと思う。この映画は、小林聡美の開いた「かもめ食堂」に、片桐はいりともたいまさこが、それぞれの理由でフィンランドにやってきて、ひょんなことからそのお店を手伝う話だ。

 初めてこの作品を観た高校生の時からこれまでの間に、私はフィンランド映画のなかでアキ・カウリスマキを好きになった。フィンランドに流れるしんとした時間、不思議に明るい夜、レストランの空気や、人々の表情のあり方、じっと見つめること、それをカウリスマキの映画で知っているからか、『かもめ食堂』で立ち止まった不思議な時間の流れるシーンを見ているとニヤッとしてしまった。アキ・カウリスマキを好きになったきっかけの作品『希望のかなた』でも、作中の飲食店で、新しいメニューのために変な食材を使うシーンがあったなと、思い出した。

 小林聡美のごはんをよそう手元というのは、映像界の中でも最高峰なのではないだろうか。肉じゃが、とんかつ、唐揚げ、シナモンロール、卵焼き。決して丁寧すぎず、だからといって雑な風でもなく、あの手元には健やかな何かが宿っている。他の映画では見たことのない組み合わせだと感じる。彼女がプールですいすいと泳ぐシーンは抽象的だ。このシーンは、なんでかアレハンドロ・ホドロフスキー監督の作品を観ているかのような感覚になる。フィンランドの大きなプールで目立つ、日本風な黒の水着はコムデギャルソン。

 少し、てりっと、ほろっと、たまにギラっとした質感のヘルシンキ。高校3年生の時の夏休み、スウェーデンに行くきっかけになった三軒茶屋のお店も、かもめ食堂のような雰囲気が流れるお店だった。木の机、水色の壁、聞こえる北欧のレコード、定食、コーヒー、エルダーフラワーティー。北欧はとても素敵だよと店主のお姉さんは教えてくれて、わたしは興味半分その夏にスウェーデンに行った。乗り換えはフィンエアー、荷物乗り換えのカウンター、荷物の重量が規格より少しオーバーして驚いている私に、空港の彼は“It’s ok!”と優しく微笑んでくれた。

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