山崎貴脚本作品に通底する“血の継承” 『STAND BY ME ドラえもん2』が描く豊かな未来
『STAND BY ME ドラえもん 2』が公開されて、1カ月ほどが過ぎようとしている。2020年は『ドラえもん』の連載開始から50年という節目でもある。夏に公開された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』も作画や演出などに力の入った作品であり、コロナ禍がなければ、この2作合わせて国内興行収入100億円も十分狙えただろう。残念ながら、そこまでのヒットは難しそうな情勢ではあるものの、2作ともに一般的には十分にヒットと呼べる人気を獲得している。
本作は2014年に公開された『STAND BY ME ドラえもん』の続編となる作品だ。監督は前作と同じく八木竜一が務めるものの、同じく監督にクレジットされていた山崎貴は共同監督に変更されていることからも、八木がより主体的に監督を務めたのだろうと推察される。もっとも、脚本は同様に山崎貴が務めており、前作と同じく2人の影響がとても強い作品であることは間違いない。
まずは軽く前作について振り返ろう。初の3DCGアニメのドラえもんということもあり、非常に力のこもった作品だった。特に日本屈指の技術を持つ白組が手がけるアニメーションは、序盤のタイムマシン空間の動きや、キャラクターの躍動感が感じられるものだった。また物語の舞台となる1970年代ごろの町並みや生活を感じる一方で、未来の描写には連載されていた当時の未来に対する希望が感じられ、ワクワクした。
今作はその路線を継承し、さらに発展させている。例えばおばあちゃんの動きであるが、腰が曲がり少しずつ動く姿は、どこか懐かしさを感じさせる。現代の高齢者は元気な方も多く、あのような動きをされる方は少なくなった印象もあるが、それがかえって1960年前後のおばあちゃん像に近づくのではないだろうか。
また、手のシワの1本1本も作り込まれていながらも、決してリアルに寄るだけではなくデフォルメも効いている。今作は原作・アニメに合わせるために子供キャラクターは3頭身ほど、大人でも5頭身ほどにデフォルメされているが、いい意味での“アニメらしさ”をより感じることができるのではないか。3DCGではよりリアルさを追求する傾向にあるが、白組らしいCG表現を模索する姿勢を感じられて、好感をもった。
町並みについても注目したい。今作では舞台となる1970年代前後の一般家庭や住宅街の他にも、未来の世界、そして1960年前後の過去の風景登場する。道路に置かれているオート三輪車や、家屋や柵の木造の質感、病院の構造などに懐かしさを覚える方もいるだろう。観客の多くが生まれていないであろう、60年も前の光景を懐かしいと感じることは、考えてみれば不思議な現象であるものの、『ALWAYS 三丁目の夕日』などで昭和ブームを巻き起こした“懐かしいの名手”である山崎監督らしい描写といえる。
作中では大人になったのび太が、子どもの頃に戻り町を飛び跳ねるようにして楽しむ描写があるが、その気持ちもよく伝わってきた。小学生の頃の世界を懐かしい、あるいはあの頃にもしも戻って遊ぶことができたなら……という、誰もが抱く郷愁の念を呼び起こす。これもまたキャラクター描写や、細かい美術が行き届いているからこそに他ならない。