綾野剛、『MIU404』とはまた異なる刑事役に 『ドクター・デスの遺産』で考える死生観

『ドクター・デスの遺産』で考える死生観

 闇サイトで依頼を受け、人を安楽死させる連続猟奇殺人犯ドクター・デス。警視庁No.1コンビである犬養と高千穂は、捜査に乗り出しますが、被害者遺族はドクター・デスに感謝し、嘘の証言で捜査を撹乱します。

 徐々に明らかになっていくドクター・デスの手がかりと、はたしてドクター・デスは猟奇殺人犯なのか、救いの神なのかという問い。このあらすじを読んだとき、ふと頭をよぎったのは、手塚治虫が生み出した漫画『ブラック・ジャック』におけるドクター・キリコでした。

 ドクター・キリコは、金さえ払えばどんな患者も助ける無免許の天才外科医ブラック・ジャックに相対する医者。ブラック・ジャックは命を助けるのに対し、ドクター・キリコが施すのは安楽死。その行動には一本筋の通った理念があることが、彼をただの悪役ではなく非常に人間的な理性を備えたキャラクターへと昇華させているのですが、今作におけるドクター・デスと、行動そのものは非常に似通ったのも感じさせます。

 しかし、ドクター・キリコとドクター・デスには大まかな点で似通った理想が感じられつつも、本質には全く違うものを抱えています。果たして安楽死が本当に法律で禁じられるべきものなのか、観終わったあとも思考は止みません。日本ではいまだ認められていない安楽死。社会的是非については、議論は絶えませんが、本作を観ることでその一端を考えるきっかけにはなるのではないでしょうか。北川景子演じる高千穂がラストシーンで呟くある言葉が、その全てを物語っているようにも感じます。

■公開情報
『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』
全国公開中
原作:中山七里『ドクター・デスの遺産』(KADOKAWA/角川文庫)
監督:深川栄洋
出演:綾野剛、北川景子、岡田健史、前野朋哉、青山美郷、石黒賢ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」製作委員会
公式サイト:doctordeathmovie.jp

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