『HiGH&LOW』は“永遠”から“継承”へ 『THE WORST』スピンオフドラマの狙いは?

『HiGH&LOW』は“永遠”から“継承”へ

 しかし、『ザム』も、ドラマパートの弱さをアクションと映像美で補うという基本姿勢はテレビドラマと同じだった。以降のシリーズは基本的にアクションと映像で見せて弱点であるドラマパートが悪目立ちしないように削る方向へと向かっていったのが、このバランスの悪さは今となっては妙な味わいとなっており、琥珀(AKIRA)周辺のくどい回想や台詞で延々と心情を吐露する場面は、逆に無いと寂しいくらいだ。

 しかしこれは、マニアがダメな部分すら愛おしく思ってしまう「あばたもえくぼ」というやつであり、より広い国際的なマーケットを狙おうという気概と可能性が『ハイロー』プロジェクトにはあるわけで、そうなるとアクションパートだけでなく、日常描写等のドラマパートも、国際的な視線に耐えうるものへとブラッシュアップしないと厳しいだろう。 

 おそらくこれは、作り手が一番の課題として感じていることではないかと思う。

 そういった観点から見たときに『ザワ』は団地で育った若者たちの青春群像劇をベースに、彼らがいかにして大人になっていくか?という地に足のついた物語を不器用ながらも丁寧に描いていたと評価できる。

 どこまでも高みを目指す“永遠”を志向するのではなく、次世代へとバトンをつなぐ“継承”を全面に打ち出したテーマも悪くない。

 これはもちろんEXILEというグループが内包しているテーマなのだが、現在、大ヒットしている漫画『鬼滅の刃』(集英社)にも見られる近年のヒット作にある傾向で、うまくハマれば、より広いファン層を獲得できる可能性は、まだまだある。

 もうひとつの課題は、男の世界である『ハイロー』において女性をどう描くのかという問題だろう。だからこそヒロインのマドカに富田望生という演技力に定評のある若手女優を起用しているのだろうが、彼女の魅力をどこまで引き出せるかが、一番の見どころかもしれない。映画シリーズがNetflixでも配信され、大きな注目が集まっている今だからこそ、これまでとは違う展開に期待したいものである。

※高橋ヒロシの「高」はハシゴダカが正式表記。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『6 from HiGH&LOW THE WORST』(全6話)
日本テレビにて、11月19日(木)スタート 毎週木曜24:59〜25:29放送
※関東ローカル。放送時間は変更になる場合あり
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督 : 久保茂昭、平沼紀久、上條大輔
出演:川村壱馬、白洲迅、中務裕太、小森隼、富田望生、矢野聖人
プロデューサー :植野浩之
脚本:高橋ヒロシ、平沼紀久、増本庄一郎、渡辺啓、上條大輔 
企画制作:HI-AX
制作プロダクション:サルベージ

■配信情報
映画『ROAD TO HiGH&LOW』(2016年)
映画 『HiGH&LOW THE MOVIE』(2016年)
映画 『HiGH&LOW THE RED RAIN』(2016年)
映画 『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』(2017年)
映画 『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』(2017年)
映画 『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』(2018年)
映画 『HiGH&LOW THE WORST』(2019年)
Hulu、Netflixにて配信中

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