『ベスト・キッド』ファンの期待を裏切らないクオリティ 『コブラ会』が傑作たる3つの理由

『コブラ会』が傑作たる3つの理由

 本作の魅力の3点目は、80年代への郷愁を描きつつ、現代の価値観や倫理観を最新の技術をもって脚本と演出を組んでいることだ。ジョニーに弟子入りするミゲルをはじめとした“現代を生きる若者たち”もキャラが立っていて、彼ら彼女らのドラマからも目が離せない。つまり、単純に出来がいいのである。たぶん『ベスト・キッド』を観ていなくても、シーズン1は優しい『レスラー』(2008年)というか、「80年代に置き去りにされた男の再生と再出発の物語」として、シーズン2は「現在を生きる少年少女らの青春群像劇」「『暴力』と『武術』の違いを描く骨太なドラマ」として楽しめるだろう。

 そしてシーズン2からは本格的に「新世代」の物語になっていくのだが、これがまた非常に出来が良い。ジョニーの弟子になったミゲルと、ダニエルの娘で、これまた空手の使い手であるサマンサ(メアリー・モーサ)の甘酸っぱい恋愛模様から、そこに絶妙に90年代のイケメン顔をしたロビー(タナー・ブキャナン)が参戦すると、物語は一気に『ビバリーヒルズ高校白書』(1990年~)を彷彿とさせる青春ラブストーリーへ。「誰と誰がくっつく?」「くっついたと思ったら、別れた!」といったドキドキ&トキメキを描きつつ、しかし全員が空手の達人なので、痴話喧嘩では肉体言語、すなわちドつきあいになる。

 特筆すべきキャラは、シーズン2から投入される激ヤバ女子高生のトリー(ペイトン・リスト)だろう。積極的に人間関係をグチャグチャにして、痴話バトルでは武器の使用も辞さない人間凶器っぷりでドラマをグイグイ引っ張っていく。もちろん、彼ら彼女らが見せるアクションシーンのクオリティも高い。量より質のスタンスで、時には戦うシーンが全く無い話もあるものの、溜めに溜めた末のバトルは素晴らしい。予告にもあるシーズン2の校舎での大乱闘は必見だ。『クローズZERO』(2007年)、『HiGH&LOW』(2015年)など、学校で殴り合うといえば日本のお家芸だったが、これはアメリカからの返答だと言ってもいいだろう。やっぱ世界中のティーンは、みんな学校で殴り合いをしたいんですよ。

 1話30分というコンパクトさ。原作への異常なほどの情熱。そして、丁寧かつ大胆に練り込まれたドラマとアクション。シーズン3と4の配信が決定するのも納得のクオリティだ。単なるノスタルジックなコンテンツに留まらない。大人になった“ベスト・キッド”たち、そして新世代の“ベスト・キッド”たちが織りなす怒涛の物語を体感してほしい。若者たちを巻き込んだ34年越しの大人のケンカは、果たしてどのような場所に着地するのか? 今はまだ不明だが、是非ともこの目で見届けたい。とりあえずシーズン3、早く来てくれ!

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■配信情報
『コブラ会』シーズン1~2
Netflixにて、独占配信中

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる