伊藤沙莉、福田麻由子が“女子会あるある”を繰り広げる 『蒲田前奏曲』で自分を見つめ直す

『蒲田前奏曲』が描く、社会への皮肉

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、蒲田住みを一瞬だけ視野に入れたことがある大和田が『蒲田前奏曲』をプッシュします。

『蒲田前奏曲』

 中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文といった日本映画界の若手実力派の4人の監督によって、1つの連作長編として制作された本作は、売れない女優マチ子の眼差しを通して、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を描いていきます。監督が各自の手法で、マチ子と周囲の人々との交わりを介在しながら、皮肉をコミカルに描き、1つの映画で4人それぞれの作風が楽しめる作品に仕上がっています。

 本作でマチ子役を務めると同時にプロデュースを手がけている松林うららは、監督それぞれに、お願いしたいテーマ、マチ子のキャラクターの説明、蒲田を使ってほしいというお題だけを提示。監督たちは、脚本のすり合わせを全くせずに、マチ子という主軸が全ての話に通じるという形になりました。ここでは、4編の中でも特に印象に残った「蒲田哀歌」「呑川ラプソディ」を紹介していきます。

 第1番「蒲田哀歌」は、『四月の永い夢』『わたしは光をにぎっている』『静かな雨』などを手がけた中川龍太郎監督による作品です。オーディションと食堂でのアルバイトの往復で疲れ果てている売れない女優・マチ子が、ある日、彼氏と間違われるほど仲の良い弟から彼女のセツ子(古川琴音)を紹介されショックを受ける。しかし、その彼女の存在が、女として、姉として、女優としての在り方を振り返るきっかけになっていきます。

 インタビュー手法を取り入れ、ドキュメンタリー映像のようにも進む画面には、登場人物たちのありのままの姿が映し出されていきます。彼らがカメラの前で淡々と零す言葉にはどこか詩的さが漂います。また、蒲田の街並み、蒲田で暮らす人々を丁寧に捉え、移り変わりゆく街並みを記録していた映画『わたしは光をにぎっている』の時にも感じた、今と昔を繋いでいく中で、本編のテーマに迫っていく、中川監督作品ならでは映像構成の奥深さを堪能できます。

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