『わたどう』横浜流星、『MIU404』星野源ら、人気俳優たちが今期ドラマで見せる“シリアス演技”

『MIU404』(TBS系)

『MIU404』の星野源 (c)TBS

 『アンナチュラル』(TBS系)の人気脚本家・野木亜紀子と塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーが再び組んだ刑事ドラマ。様々な事件の初動捜査を行う架空の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」の面々の活躍を描く。村上虹郎やKing Gnuの井口理など、毎話登場する多彩なゲストもウリだ。

 『MIU404』は「バディもの」の構造になっており、星野源演じる元捜査一課のエリート刑事と、綾野剛扮するたたき上げの熱血警官の凸凹コンビぶりが大きな推進力を生み出している。『日本で一番悪い奴ら』では、純粋すぎて堕ちていく警官を狂気すら感じる熱演で演じ切った綾野だが、本作では一種の狂言回しとして、猪突猛進な伊吹をハイテンションな演技で魅せる。

 綾野のカラリとしたコミカルな表情も貴重だが、過去のトラウマを抱え、「自分も他人も信用しない」志摩に扮した星野のクールで神経質な表現も、実に新鮮。綾野との共演ドラマ『コウノドリ』(TBS系)や、社会現象化した『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)など、クールな役どころもこなすが、『地獄でなぜ悪い』や『箱入り息子の恋』などの映画、バラエティ番組『LIFE! 人生に捧げるコント』(NHK)、そしてミュージシャンとしての彼のイメージは、柔和な好青年なのではないか(映画では振り切った演技が目立つ)。

 しかし『MIU404』では、周囲に壁を作る“陰のある男”にチャレンジ。用意周到で冷静沈着だが、陰で「相棒殺し」と蔑まれ、過去からの亡霊に苦しみ続けるという難しい役どころだ。志摩の過去に迫る第6話では、タガが外れて感情がほとばしってしまう熱演を披露している。普段の志摩とのギャップが、観る者に衝撃を与えた。

 ギャップという面では、クールなキャラクターをベースにしているからこそ、綾野との掛け合いにもダイナミズムが生まれ、コミカルなやり取りが生き生きと輝きだすともいえよう。

 そこに、岡田健史扮するキャリア組の新米、渡邊圭祐演じる動画配信者、菅田将暉による謎めいた男といった一癖もふた癖もあるキャラクターたちが混入し、人物たちが見せる多彩な表情が積み重なっていく点も、『MIU404』の面白さだ。

『半沢直樹』(TBS系)

『半沢直樹』の賀来賢人 (c)TBS

 『半沢直樹』といえば、熱と熱がぶつかり合うような高カロリーの演技合戦が“風物詩”。現在放送中の新作でも、堺雅人と香川照之を中心に、よりレベルアップ、いやエスカレートした怪演対決が繰り広げられている。

 しかし、そんな中でやや異彩を放っているのが、賀来賢人だ。本シーズンの半沢(堺雅人)は、東京中央銀行から、子会社の東京セントラル証券へと出向を命じられてしまう。そこで営業企画部長のポストを与えられた半沢の部下となるのが、賀来演じるプロパー(生え抜き)社員の森山だ。

 最初こそ「外様」である出向組の半沢に反抗的な態度をとっていたが、「大事なのは感謝と恩返しだ」という半沢の仕事に対する情熱に影響を受け、めきめきと成長していく森山。かつての親友であるIT企業の社長を窮地から救いたいと願い、身を粉にして働いていく。半沢と森山のコンビは、シリーズに新風を吹き込むと同時に、バットマンとロビン、アイアンマンとスパイダーマンといった師弟関係も想起させ、次世代のヒーローの誕生をも期待させていく。

 タイトなスーツに身を包み、生真面目な男を実直に演じた賀来の演技は、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)などの福田雄一作品で見せる表情とは全く別物。怪物たちのひしめく本ドラマで、ぐっと抑えた演技で錨(いかり)の役割を担っている(剣道シーンも披露)。

 『Nのために』(TBS系)でのミステリアスなキャラクターや『ちはやふる』で演じたかるた名人など、もともと演技力は折り紙付きだが、より重要なポジションを与えられたといっていいだろう。今後、ますます活躍の幅が広がっていくに違いない。

『半沢直樹』の吉沢亮 (c)TBS

 ちなみに、スピンオフ『半沢直樹イヤー記念・スピンオフ企画 狙われた半沢直樹のパスワード』で主演した吉沢亮も、第3話で大活躍を見せる。こちらは才能あふれるプログラマーという役どころで、窮地に陥った半沢の救世主となる。目の表情で切迫感を物語る、吉沢の演技は放送時、大いに話題となった。

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