本郷奏多、30代に向けて見せる新たな魅力 突出した存在感と“普通の男”としての味わい

 高橋一生、田中圭、中村倫也、賀来賢人、千葉雄大などなど……。これまで数多のドラマ・映画などに脇で出演し、知名度もあった実力派俳優が、アラサーになってから突然、お茶の間的ブレイクを果たすという流れが近年、できてきている。

 そうした流れの中、この夏、急速に露出を高めている気になる俳優が、本郷奏多だ。

 7月11日には中条あやみとの時空を超えたタイムトラベル・ラブストーリー『56年目の失恋』(NHKBSプレミアム)が放送された。また、7月17日からは、妖怪「天邪鬼」役で岡田健史とバディを組む『大江戸もののけ物語』(NHK BSプレミアム)に出演している。さらに、放送再開が待たれる大河ドラマ『麒麟がくる』には、自身初出演で、重要な役どころで登場する。いずれもNHKで、作風も役柄も大きく異なるものだ。

 そもそも本郷奏多というと、幼少期のキッズモデル時代から、2002年の俳優デビューを経て、29歳の現在に至るまで人生のほとんどの時期で仕事をしてきたベテラン俳優だ。華奢な身体、彫刻のような顔立ち、血管が浮き立つような薄く白い肌は、岩井俊二が企画プロデュース・脚本を手掛けた連続SFドラマ『なぞの転校生』(テレビ東京系)のアンドロイド役を筆頭として、“人間じゃないモノ”にも違和感なくハマる。

 今回、『大江戸もののけ物語』で「天邪鬼」を演じることになった思いについても、自身がインタビューで「人間じゃない役をやることも多いので」と語っているように、異次元・異空間の「異物」はお手の物だ。

 また、人気漫画やアニメの実写化に際して、様々な役に原作ファンからネット上で「指名」されることも多い彼。これまで演じてきた実写キャラは、映画『キングダム』で反乱を起こす成キョウや、ギャンブル狂の天才少年『アカギ』(BSスカパー!)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』のアルミン、『GANTZ』の屈折した冷血漢・西丈一郎、『実写映画 テニスの王子様』の越前リョーマなど数多く、作品自体の評価が芳しくないときですら、「本郷奏多はイメージ通り」と言われてきた。

 とはいえ、『弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~』(日本テレビ系)において、並み居る若手イケメン俳優たちの中で、「吹奏楽部で指揮者になりたかった野望を抱きつつ、貧乏で新聞配達をしながら一人暮らしをする一塁手」として異彩を放ち、視聴者たちの関心を一身に集めてしまったときのように、ともすれば主演や他の役者たちを食ってしまう存在感がある。

 顔にも身体、頭脳にも、そこから繰り出す言葉や所作にも、「贅肉」的なものがまるでない。番宣などで登場するバラエティ番組や映画などの舞台挨拶でも、必ずウィットに富んだ笑いを盛り込んでくるサービス精神ゆえに、「月並み」がなく、いつでもエッジが効いている。ガチのガンダムファンであることや、著名人が出場する『麻雀最強戦』(AbemaTV)で優勝経験があることなども含め、徹底して研ぎ澄まされた雰囲気は、漫画・アニメファンやサブカル好き、オタク的素養のある人、若い世代などの間で絶大な信頼を得ている一方で、“モブ”にはどうしてもなれない。というか、彼が演じると、モブがモブでなくなる危険性もあるのではないかと思っていた。

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